2月候補者
三木弘

三木弘 三木は歯を食いしばってラストスパート。現役日本最高を記録した



99年02月15日付紙面掲載

現役日本最高タイムで2位

 ◇陸上 東京国際マラソン◇14日◇国立競技場発着、大森海岸交番前折り返し42・195キロ◇出場8カ国10人の外国招待選手含む150人◇完走117人(完走率78%)◇晴れ人

 バレンタインデーに、男子陸上界から「シンデレラボーイ」が現れた。マラソン2度目の伏兵・三木弘(23=旭化成)が、2時間8分5秒の日本歴代4位、現役最高タイムで2位に入る健闘を見せた。30キロすぎから清水康次(29=NTT中国)との日本人トップ争いに競り勝ち、国内レースでの日本最高を樹立した。優勝はゲルト・タイス(27=南アフリカ)で、2時間6分33秒の世界歴代2位という快記録だった。

 レース後の国立競技場。前代未聞の「ラブコール・タイム」が、主催者側の演出で用意された。お立ち台の三木が持つ携帯電話からマイクを通し、宮崎・延岡市にいる恵夫人(23)の声が流れてくる。「お疲れさま。すごいネ、ビックリしたワ」。衆人環視も忘れ? 三木が言葉を返した。「優勝はできなかったけどこれ(快記録)でお祝いの言葉をいっぱい頂けるね」。完全に2人だけの世界! 2人は昨年12月1日に入籍し今月28日に挙式を控える。人生の門出を、三木は自らの快走で前祝いした。

 腰の据わったレース運びだった。無謀ともみえる高橋の飛び出しに「レースが動くのは25キロすぎ。今は集団の中にいるべき」と第2集団で「その時」を待つ。読みは的中。31キロすぎ、タイス、清水とともに高橋を抜き去る。勝負のツボを心得たタイスには引き離されたが「絶対に負けない」と気力を振り絞った清水とのマッチレースは制した。最大高低差約40メートルと記録が出にくいことで有名な東京で日本選手国内最高タイムの快挙だった。

 「うち(旭化成)の(現役)最高記録2時間8分43秒を切れてうれしい。でも、前回もそうだけど、詰めの甘さを実感しました」。初マラソン日本歴代2位を出したびわ湖では2秒差で9分台を、この日も6秒差で7分台を逃した。一抹の悔いは残るが「世界最高との差は少しずつ縮めている。コツコツやっていけば、いつかは」と世界挑戦の手ごたえは十分につかんだ。

 無名の高校時代。テレビを通し世界陸上金の谷口、バルセロナ五輪銀の森下の走りを見て「旭化成に入って強くなる」と決心した。宗茂監督(46)をして「調整を見て6分台もあり得るかな? と思ったら指導者になって初めて鳥肌が立った。わずか2回で完ぺきにマラソンを自分のものにした」と言わしめた。高校時代まで無名の三木が、一躍シドニー五輪の星へ―。雑草男のサクセスストーリーが幕を開けた。

 【渡辺佳彦】