2月候補者
里谷多英

里谷多英 W杯モーグル猪苗代大会で逆転優勝した里谷多英



99年02月18日付紙面掲載

里谷多英、今季初優勝

 ◇スキー フリースタイルW杯・モーグル 猪苗代大会◇17日◇福島・猪苗代町リステルスキーファンタジア◇出場男子40人、女子27人◇晴れ、無風◇観衆1923人

 長野五輪金メダリストの里谷多英(22=北海道東海大)が、雪辱の今季初優勝を果たした。予選を7位で通過すると、決勝では五輪を再現するかのような会心の滑りを披露。上位6人を抑え、W杯通算2勝目を挙げた。今季は気力の低下が伝えられ、表彰台なしと苦しんでいたが、すべての雑音を吹き飛ばす勝利だった。好調の上村愛子(19=北野建設)は予選を3位で通過しながら、決勝では7位に終わった。

 静かな優勝だった。里谷は1位が確定した瞬間、ニッコリと笑った。だが、跳びはねることも、涙を見せることもなかった。「確かに五輪の状況と似ていたけど、ちょっと違ってました」。1歳だけ大人になった里谷は、冷静に勝利を受け止めた。

 展開は五輪のビデオを見ているようだった。予選上位12人のうちの下位から滑走する決勝で、里谷は6番目スタート。エアは順番こそ変わったものの、長野と同じコザックとツイスター・スプレッドを決めた。タイムもその時点で最速の28秒75をマークしてトップに立ち、上位6選手の滑りを待った。ラスト3人になっても里谷の1位は変わらない。ここで上村が失敗。W杯総合1位のエルフマン、同2位のバテルのポイントも、里谷の出した24・29点を上回ることはなかった。

 金メダルを取った昨シーズン終了後、夏に長期休暇を取った。「体力が落ちるのは分かっていた。でも4〜5年ぶりのまとまった休みだし、楽しかった。後悔していません」。ただシーズンが始まっても、体は元に戻らなかった。最大の目標を達成した後に、気力を奮い立たせるのも難しかった。フジテレビに就職が決まったことで、現役引退も取りざたされた。本人は「やめたい、とは思わなかったけど、いろいろ考えた」と振り返った。

 1月のW杯北米転戦で浮上のきっかけをつかんだ。「最初は気持ちに甘えがあったと思う。第2戦からは切り替えて、自分の力を出せるようになった」。第3戦で5位に入賞。上り調子で日本に戻ってきた。里谷にとって滑走タイムが調子の指針となるが、この日の28秒75は決勝、予選を通して全体2位。「計時を見た瞬間、良かったと思った」。ようやく体が「レース仕様」になってきた。

 賞金の6000スイスフラン(約50万円)は「チームのみんなと飲みにいきま す」と明るく言った。雪の女王が、完全復活した。

 【高宮憲治】