横綱貴乃花(26=二子山)が、兄、親との不和騒動を乗り越え、通算20回目の優勝を決めた。注目された若乃花(27)との「兄弟決戦」は実現しなかったが、結びの一番で曙(29)を寄り切り、秋場所5連覇を達成。大鵬、北の湖、千代の富士に続いて史上4人目となる区切りのV20を、大鵬の26歳ちょうどに次ぐ26歳1カ月で記録した。貴乃花は周囲の騒ぎをよそに、「相撲道」を追い求める。
圧倒的な強さが、シナリオを書き換えた。周囲の期待は夢に終わった。目の前で若乃花が敗れ、「兄弟決戦」の可能性は薄れていた。勝てば優勝が決まる結びの一番。決戦をあきらめきれないファンが、曙を応援する。そんな中、貴乃花は穏やかな表情で土俵に立った。吐き出したい闘志を、静かに燃やした。
すべては目の前の相手にぶつけた。取組後、右の鼻の穴から、鼻血が飛び出していた。今場所一番の立ち合い。左で前みつ、右は深く差し巨体を揺さぶった。「力が入りました」。曙の胸に顔をうずめた。万全の相撲で2連敗中の難敵を寄り切った。この日、初めて朝げいこを休んだ。「体の力を抜こうと思って」。気合が空回りした前日の武蔵丸戦の反省を生かした。
秋場所5連覇、史上4人目の大台到達。大鵬、北の湖、千代の富士ら大横綱に肩を並べた。大鵬の持つ最多優勝記録32回更新の期待もかかる。「あらゆることを乗り越えて勝つのが横綱なんです」。悪役となっても、孤独になっても、勝たなければならない。それが貴乃花の目指す横綱像。今回は実現しなかった「兄弟横綱決戦」に向けて、「まだまだ、これからが勝負だよ」と目を見開いた。