10月候補者
田中秀道

田中秀道 優勝トロフィーを両手に抱えて大喜びの田中秀道



98年10月5日付紙面掲載

直道振り切り、でっかい初V

 田中秀道(27=信和ゴルフ瑞陵GC)が、日本オープンの歴史に名前を刻んだ。最終18番パー4。コース右の松林から「ミラクルショット」で3オンに成功してボギーにまとめ、通算5アンダーで尾崎直道(42)を1打差で振り切った。プロ8年目、ツアー通算4勝目での日本タイトル初戴冠。今季2勝目で賞金ランクも3位に浮上した“最軽量シード選手”が日本ツアー界に旋風を呼ぶ。

 田中にマイナス思考は似合わない。「ここで逃げたら、4日間のすべてがムダになる!」。最終18番パー4。コース右に茂る松林の中で第2打が、木にはね返され左方向へバックした最悪の状況で、一瞬で決断した。第3打は横へではなく、前へ。左右の2本、その先の低い1本。3本の松に囲まれ、約15ヤード前方にポッカリ空いた「半径50センチの空間」に全神経を集中させた。短く握ったクラブは6番アイアン。ボールは鮮やかに的を打ち抜いた。162ヤード先のグリーン周囲で「林の中の田中のボールが乗った。ミラクル3オンだ」と大歓声が沸き起こった。

 日本最高峰試合の日本オープンだからこそ、歴史に残る一打は生まれた。前半で尾崎直との3打差を引っ繰り返した。逆に3打差リードで迎えた16番パー3で、この日初めてパーオンに失敗、初ボギーを喫した。2打差の18番パー4の第1打を、右松林に打ち込んだ。しかし、苦境に立ち向かった。

 「頭の中で“日本オープン”の文字が大きくなっていた。でも、(第2打で)球が木にコン! と当たる音を聞いて、吹っ切れたんです」。ドラマのような3オンでも、カップには35ヤードもあった。パーパットは2メートルもショートした。それでも、気持ちは揺るがない。「今、オレ、真っ青になってんだろうな」と冷めた意識を頭に宿し「夢のようなボギー」をもぎ取った。

 日本タイトル初奪取で来年から10年シードを手にしたが、せっかちな目標は掲げない。「10年は正直うれしいけど、だから海外へというのはイヤ。自分がちゃんと力をつけて……」。一歩一歩、前へ。劇的に日本オープンを制した男は、自分の信じた道を歩んでいく。