坪井が阪神のみならず、プロ野球の歴史を塗り替えた。初回の第1打席で中前打、3回には左二塁打、5回には左前打の3安打を放ち、打率を3割2分8厘とした。残り3試合でそれぞれ5打数無安打、つまり15打数無安打でも、1954年(昭29)の巨人広岡達朗がマークした3割1分4厘を上回る。3割打者の坪井が1試合5打数無安打は確率的に考えにくく、球団としてもフル出場は控えさせることも予想される。この段階で、44年ぶりとなる2リーグ分裂後の新人最高打率が確定した。
「記録を塗り替えてやろうとか、そんなおおげさなことはないです。でも、記録に残るのは素直にうれしいです」と、坪井は話した。記録はまだある。前日4日、後藤次男元監督が48年に記録したチームのシーズン最多安打記録(129本)に並んでいたが、この日の第1打席で中前打を放ち、あっさり抜き去った。球団の記録を50年ぶりに更新もした。
これで新人王争いがますます面白くなった。最大のライバルと目される巨人高橋は打率3割ジャスト、19本塁打、75打点でシーズンを終えた。今の時点で本塁打、打点で高橋に後れを取っているが、新人最高打率確定は有利な材料。さらに球界初の新人首位打者の夢も残されている。トップにいる広島前田には7厘差まで迫っている。「まだゲームが残っていますから」と言った坪井。その言葉には、したたかに首位打者取りが隠されている。だれより吉田監督が「坪井が3安打して、夢をつないでくれましたわ」と期待を示した。