<東京6大学野球:早大3-0立大>◇第4週2日目◇3日◇神宮

 早大・斎藤佑樹投手(3年=早実)が立大戦で、8回2安打無失点12三振を奪い、リーグ通算20勝を達成した。今季最速の147キロをマークして無四球と好投し、自己ワーストの6四死球6失点と乱れた法大戦から中4日で復調。通算36試合での20勝到達は平成以降最速タイとなる。チームは3-0で勝ち、1勝1敗のタイとした。

 斎藤がつかんだ大切な20個目のウイニングボールは、大石がクールダウンのキャッチボールに使っていた。斎藤は見向きもしないでベンチ裏へと消えた。2試合足踏みして到達した大台だが「20勝だからって別に、10勝のも持ってないし、1勝目も?

 ないですね」と笑っていた。

 6四死球6失点だった法大戦から中4日で別人になった。最速147キロの直球、変化球を低めに集め続けた。「初球を投げるまで、先頭を抑えるまで不安があった」と珍しく弱気だったが、徐々にペースアップ。テンポ良く、8回まで2安打、毎回の12奪三振で0封だ。

 中4日の間、昨秋のビデオと見比べて、フォームのバランスをチェックした。「雰囲気です」と自分にしか分からない微調整を繰り返した。シャドーピッチングに、ブルペンでは100球近く投げた。1年生女房の杉山は「ストレートの切れが全然違った」と修正能力に驚いた。

 法大打線に配球を研究された話を伝え聞くと、「読まれていても、良かったら打たれない。実力がなかった」と潔く受け止め、結果で見返した。4月中旬、グラウンドの右翼後方に隣接する準硬式野球場付近から熱い視線を送られていた。プライベートで東京・東伏見に初めて現れた早大大学院生の桑田氏だった。尊敬する桑田氏もあこがれていたという神宮の舞台でマウンドを守り続け、そしてこの日、1つの節目にたどりついた。36試合での20勝到達は、怪物と呼ばれた江川氏からは3試合遅れるが、6大学最多48勝の山中氏は上回る。「江川さんとは比べものにならないと思いますが、目標は47勝、48勝」と志は高い。

 3年生になり、マクロ経済、ミクロ経済を学ぶゼミに入った。卒論には「大学野球が日本経済に及ぼす影響」を執筆する予定と、文武両道を突き進む。20勝はあくまで通過点。マー君が野村監督にウイニングボールを手渡したような感動シーンがないことが、逆に心強かった。【前田祐輔】