<全日本大学野球選手権:北大3-1四国学院大>◇初日◇8日◇1回戦◇東京ドーム

 北のエリート軍団が創部110年目にして、悲願の全日本初勝利を飾った。8年ぶり4度目出場の北大(札幌学生)が、3-1で四国学院大(四国地区)を撃破した。プロも注目のエース石山智也(4年=北広島)が4安打1失点で完投。打線は5回表2死満塁から押し出しで同点とし、2番城嶽祐太朗主将(4年=長田)の2点適時打で勝ち越した。

 東京ドームの晴れ舞台は、北大のためにあった。勝利の瞬間、石山が両腕を突き上げ、駆け寄るナインと抱き合った。創部110年目での全国1勝。夢がかなった。スタンドではリードした5回から一投一打に歓声がわき、拍手が鳴りやむことはなかった。

 全日本初出場の65年から45年。伝統の重みを背負って、石山が1球1球に気持ちを込めた。ストライクが入るたびに、打者を打ち取るごとに応援団が後押しする。「北大初めての勝利。正直あまり実感はないですが、先輩の顔を見ると、あとから実感すると思う」と笑顔で言った。全日本初出場時のOBでもある安達三郎監督(65)は「うちの大学にとって、歴史的な勝利」と目頭を熱くした。

 エースとして貫禄(かんろく)を示した。2回裏四国学院大1死一塁。7番牟礼の打球は三邪飛かと思われたが、梅辻拓弥三塁手(3年=札幌南)が目測を誤った。だが、スライダーで打ち取ると、次打者も137キロの直球できっちり抑えた。打者31人に対して内野ゴロが17個。「調子がよくなかったので、スライダーや直球を低めに集めた」と振り返った。安達監督は「横から安心して見ていられた」とねぎらった。

 最下位に終わった昨秋のリーグ戦後、チーム事情を考えて捕手からの転向を直訴した。「正直迷いもあった」が、全日本に向け最善策と考えた。「(相手の)情報があまりなかったので、体の大きさなどを見て投げた」。捕手の経験を投球にも生かしてきた。

 リーグ戦で付けていた背番号8は、今大会からエース番号の18に変わった。「重みのある番号です」。プロも注目しており、日本ハムでは隠し玉としてリストアップしている。この日の投球を視察した今成スカウトは「1球1球ボールが動いている。スピードはまだ足りないが、1球に対する集中力に好感が持てる」と評価した。北大野球部史に新たな歴史を刻むと同時に、隠し玉ではなくなった。【石井克】