<東都大学野球:中大1-0亜大>◇第3週初日◇21日◇神宮

 今秋ドラフト目玉候補、中大・沢村拓一投手(4年=佐野日大)が、今季初先発で、自己最多の16奪三振完封を決めた。亜大・東浜巨投手(2年=沖縄尚学)と投げ合い、延長10回132球で3安打に抑えた。今夏左脇腹痛で大学日本代表を辞退したが、国内12球団スカウトの前で最速155キロを披露。課題だった変化球の制球も向上し、延長10回に4番井上晴哉内野手(3年=崇徳)のサヨナラ本塁打を呼び込んだ。

 ホームベースで歓喜に沸くナインの真ん中に、満面の笑みを浮かべる沢村がいた。サヨナラ勝ちが決まった瞬間、沢村はベンチ裏で水分補給をしていた。歓声を聞き、グラウンドへ飛び出していった。「見てないのに喜んでました」。試合後は「よしよしよし」と口ずさみ、会見場に現れた。

 5日の青学大戦は2番手で6回1/3を投げたが、7月に痛めた左脇腹の影響で、高橋善正監督(66)に100球の球数制限を設けられていた。だが7回無死からの5者連続三振を含む、リーグ戦自己最多の16奪三振。最速は155キロをマークした。「完治と思ってもらっていいです」と完全復活した。

 進化して戻ってきた。18日のシート打撃で発見があった。「8割の力で投げた方が良い球がきてると監督に言われた。リリースの時に90~100%になればいい」。力みが抜けると、球のキレが増した。16三振のうち12個を空振りで奪った。抜けがちだった変化球の制球力も向上し、四球はわずかに1つだった。「今日は(直球と変化球の割合が)5対5か、変化球が多いくらい。春は7対3だった」。結果、直球が生きた。

 「負けないことに意味がある」と言う。試合前は、ソフトバンク斉藤の投球映像を見て、集中力を高めている。03年に最多勝、最高勝率、沢村賞などのタイトルを獲得した「負けない姿」をイメージ。淡々とスコアボードに0を並べ、見事に体現してみせた。36日後に迫ったドラフトを前にまた1つ、ステップアップした。【今井恵太】