日刊スポーツ評論家の谷繁元信氏(48)が広島・日南キャンプを訪問。FAで抜けた丸佳浩外野手(29)の影響に絞って戦力をチェックした。

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丸の穴は埋まるのか。リーグ4連覇に挑む広島は、巨人にFA移籍した丸の約100打点分を誰が補うのか、に浮沈がかかっている。

中堅の守りは野間の守備力で埋まる。得点の部分は左翼手、一塁手、そして三塁手が大事になる。左翼手は新加入の長野、外野転向の西川で、松山、バティスタは左翼と同時に一塁手の候補になる。緒方監督がポイントに挙げていたのは三塁手。安部が1年間、ケガなくいければ一番形がいい。どの選手が入るかで100打点は可能だし、それ以上の可能性もある。

鈴木誠也のすごみも伝えたい。昨年は一昨年の右足首故障の影響で出遅れたが、今年はこの時期にして、さらにレベルが上がったと感じる。打撃でタイミングの取り方が一定して、バットもコンパクトに出ていく中で、インパクトの強さがさらに上がった。芯で捉えた音も、極端に言えば倍くらいに感じる。

バットを見せてもらったが、メーカーのマークが刻印された右側面に打点があるのが珍しかった。普通、右打者はマークを投手側に向け、バットを少し寝かせながら打つため、マークの左側面に打点が集まる。理由を聞くと「投手側にマークを向けるとスイングの時に目に入って気になる」と答えていた。インパクトの瞬間を目で捉えているのだろう。すごいところが見えているなと感じた。

昔、イチローと日米野球に出た時のことを思い出した。練習でイチローがバットがなく、鈴木尚典に借りて5、6球を打ってバットを見たら、打点がすべて寸分狂いなく同じで驚いたことがある。いい打者にはすごみが備わっている。

丸が抜けた影響がないとは言わない。ただ初めて広島の日南キャンプを訪れ、感じたことがある。施設が小規模ということもあるが、グラウンドにいる選手が常に「何か」に動いている。選手個々がやらなきゃいけないことを理解し、メニューに関与している。空白の時間がなく、グラウンドに動きを感じられる。3連覇したチームとして洗練され、選手の個々の力量もあり、丸の不在は感じさせない。(日刊スポーツ評論家)