9年ぶりに開幕から3カード連続負け越しスタートとなった広島に、日刊スポーツ評論家の広瀬叔功氏(82)が緊急提言だ。野手陣ばかりに注目が集まるが、投手陣の踏ん張りの重要性も説く。さらには首脳陣の立ち居振る舞いにまで言及。浮上の鍵は野手陣だけではない。【取材・構成=前原淳】

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開幕からまだ9試合しか消化していないというのに、王者広島がどうも浮足立っているように映る。長いシーズン、浮き沈みはある。だが、7日の阪神戦後に緒方監督は会見を拒否したようだし、コーチ陣からは敗戦理由を特定の選手に押し付けたようなコメントも見られた。3連覇を経験した首脳陣がシーズン序盤に一喜一憂してどうする。選手に切り替えと落ち着きを与える立場にある首脳陣がばたついては、選手が方向性を見失ってしまう。あらためて首脳陣と選手がチームが進むべき道を共有するために、コミュニケーションを密にとっていく必要があるだろう。

25年ぶりに優勝した16年シーズンを思い出してみるといい。たとえ試合に敗れても「チャンスは作れている。チャンスを多く作れればいずれは得点になる」「投手は粘ってくれた」などと鼓舞するコメントがあった。だからこそ、選手たちは前を向けた印象がある。

とはいえ3連覇するような常勝球団でも、緊張感を常に維持するのは簡単なことではない。開幕前の前評判が高ければなおさら。チーム内に「大丈夫だろう」という「安心感=隙」が生まれることもある。まだ焦る必要はないが、もう1度危機感を持たなければズルズルいってしまう危険性をはらんでいる。

冷静になれば、慌てることはない。丸(巨人)や引退した新井が抜けた打線ばかり注目されているが、問題は攻撃面だけではない。守備面にもある。先発投手がクオリティースタート(投球回6回以上自責3以下)を記録した4試合は3勝1敗。7割5分の高い勝率からも先発陣のゲームメーク力も求められる。加えて、ここまでリーグワースト11失策の守備面のほころびも見過ごせない。3連覇できたのは他球団に付け入る隙を与えない「凡事徹底」が浸透していたからだ。取れる試合を落としているようなもの。選手個々の能力だけが問題ではなく、開幕直前までテストを繰り返した弊害でもあるが、精度と連係を深めていかなければいけない課題といえる。

多少の出遅れはまだ取り戻せる。凡事徹底や献身性あるプレーなど、もう1度チームが同じ方向を向き地に足をつけて戦っていくことが浮上の1歩となるに違いない。(日刊スポーツ評論家)