西武の初回の攻撃は、あの1987年日本シリーズの「伝説の走塁」を思い出させた。私にとって見ていて嫌な1回だった(笑い)。

厳密に言えば、状況はまったく同じではない。87年シリーズ第6戦で一塁走者だった辻監督が中前打でホームインした時は、中堅クロマティの送球が緩慢になった。さらに中継した遊撃川相もボールを捕ってから三塁方向へ体を回すのではなく、打者走者を気にして二塁付近にいた私の方を向いた。そこを三塁ベースコーチの伊原(春樹)さんに突かれた。

今日の試合で一塁走者だった源田が一気に生還した場面は、エンドランでスタートを切ってから、まったくスピードを緩めることなく三塁を回った。基本に忠実な全速力の走塁が丸を焦らせ、ファンブルを誘発したから生還できた。

私が対戦した時代の西武はまさに黄金期。清原、秋山ら長距離打者もいたが、小技を使える選手も多かった。何より1つ1つ確実に基本を大切にする野球だった。今は球界全体が小技をしなくなり、西武も3点を奪った6回に山川、森、中村が3連打したように強力打線が売りだ。だが源田あたりには、あの時代の西武のエッセンスを強く感じる。さすがは辻監督が1年目から使い続けるだけのことはある。(日刊スポーツ評論家)