王手をかけられた阪神は土壇場での1勝で、リセットする時間をつくれた。普段なら雨天中止のないドームだが、台風による順延で1日空く。この空白の1日が、打たれている打者を洗い直す貴重な時間になる。

今、巨人打線で手がつけられないのが4番岡本だ。5回のバックスクリーンへの1発は私も現役に戻れたら、もう1本だけ、あの快感を味わいたいと思わせるほどだった。7回の左前打も内角低めのスライダーを高い技術で運んでいた。本来なら、梅野もエサをまきながら短期決戦を通してストーリーを描いて攻めたいところ。だが投手事情が苦しく、継投が続き、その投手の一番いい球を優先させて勝負するしかない配球に追い込まれている。

私にも経験がある。中日時代の04年の日本シリーズ西武戦。第4戦がドーム球場ながら台風で順延となった。3戦目までは和田に打率4割1分7厘、カブレラに4割と打たれまくった。1年間を通した資料などをベースに配球を考えていたが、打たれる中でどうしても迷いが出てくる。だが空くはずのなかった1日でホテルの自室で3戦のVTRをすべて見返し、自分でチャートを書き直した。連戦の状況では翌日のことも考え、焦りがあり、なかなか冷静になれないが、これで攻め方を思い切って切り替えられた。シリーズには敗れたが、4戦目以降は1発を食らいつつも和田、カブレラともに2割3分5厘に抑えた。

阪神バッテリーには極端さが必要になってくる。例えば外角低めに弱点があるならば、全球種をアウトローだけに集中させる。または内角だけに投げ抜く。相手に「あれ、攻め方が変わったな」と少しでも思わせるだけで、攻防の流れが変わってくる。(日刊スポーツ評論家)