今オフ最注目の新外国人、オリックスのアダム・ジョーンズ外野手(34)を日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(49)が3日、分析した。

メジャー通算282本塁打を誇る強打者。寒い中でのフリー打撃では調整段階とはいえゴロを打たず、中堅から逆方向へ打球を上げた。ボールの見逃し方から選球眼の良さもうかがわせ、宮本氏は技術の高さに太鼓判を押した。ハングリー精神が不足する懸念はあるが、大物メジャーリーガーのプレーに期待が高まる。

オリックスキャンプを訪れた本紙評論家の宮本慎也氏はジョーンズの打撃練習に鋭い視線を向ける(撮影・前岡正明)
オリックスキャンプを訪れた本紙評論家の宮本慎也氏はジョーンズの打撃練習に鋭い視線を向ける(撮影・前岡正明)

新外国人で1番の注目選手といえば、なんといってもオリックスのジョーンズだろう。メジャー通算282本塁打。私も実績十分のメジャーリーガーが、日本でどれだけ打てるのか、想像しただけでもワクワクしていた。キャンプでの大きな楽しみだった。まだ調整段階だが、それを割り引いても“強打者の片りん”は十分に感じられた。

初めて見たフリー打撃でも「おっ、さすがだな」という技術があった。とにかくバットのヘッドを返さずにインパクトするから、ゴロの打球はほとんどなし。この日は寒く、フリー打撃の合間にたき火で手を温めていたように体も動きにくい状況だったが、バットはしっかり内側から出ていた。体の軸回転で打つタイプで、寒くて体が回らないと引っ掛けたりするが、打球はセンターから逆方向へ上がっていた。どんな環境でもバットを出す技術が体に染み付いているのだろう。これで暖かくなり、調子が上がってきたら、いったいどんな打球を打つのか楽しみだ。

もうひとつ、ボールを引きつけて打てるから、ミートポイントが近く、ボール球の見逃し方がいい。打撃投手の球だけに、ボールの見極めは簡単だが、それでもピクリともしないで見逃していた。前に突っ込む癖があると、どうしても上半身が動くが、ジョーンズの場合、下半身すら動かないで見逃していた。日本で成功するというより、メジャーでも強打者だったのだろうな、と想像できる技術的な要素はそろっていた。

不安点を挙げるなら、年齢からくる精神面だと思う。現在34歳。どんな選手も、引退の2文字が頭に浮かんでくる。メジャーでの成績が、下り坂なのは紛れもない事実だろう。日常生活での慣れない環境や、ストライクゾーンなど日米の違いに戸惑った時、はね返すには強い精神力が必要。「ダメなら引退すればいいや」という軽い気持ちでは、壁に当たった時に心が折れ、乗り切れなくなる。

現在の日本野球のレベルはそれほど甘くないし、実績十分のメジャーリーガーが日本で苦しむのは、ほとんどがこのパターン。性格は明るそうで、生活面から崩れることはなさそうだが、私には「何が何でも成功してやる」という武骨な気概を感じないのも、正直な感想として残る。そんな懸念を払拭(ふっしょく)し、本場のメジャーリーガーのプレーを見せてもらいたい。【日刊スポーツ評論家】

◆アダム・ジョーンズ 1985年8月1日、米カリフォルニア州生まれ。03年ドラフト1巡目でマリナーズ入団。06年メジャーデビュー。08年からオリオールズ、昨季はダイヤモンドバックス在籍。メジャー通算1823試合、1939安打、282本塁打、945打点、打率2割7分7厘。WBC13年、17年大会米国代表。188センチ、98キロ。右投げ右打ち。

オリックス西村監督(右)と話す本紙評論家の宮本慎也氏(撮影・前岡正明)
オリックス西村監督(右)と話す本紙評論家の宮本慎也氏(撮影・前岡正明)

<オリックス20年開幕予想オーダー>

1(二)福田

2(三)中川

3(左)吉田正

4(右)ジョーンズ

5(一)T-岡田orモヤ

6(指)ロドリゲス

7(中)宗

8(捕)若月

9(遊)安達

(投)山岡

<ジョーンズ・アラカルト>

◆生まれ 1985年8月1日、米国カリフォルニア州生まれ。サミュエル・モールス高校出身。

◆球歴 03年ドラフト1巡目(全体37位)でマリナーズ入団。06年7月12日にメジャーに初昇格し、同14日のレンジャーズ戦でデビュー。13年シルバースラッガー賞を受賞。オールスター出場5度。メジャー14年間で通算1939安打、282本塁打、945打点。

◆守備の名手 オリオールズ移籍後の09年に中堅手に定着し、ゴールドグラブ賞を初受賞。12~14年は連続受賞した。

◆米国代表 17年の第4回WBC大会に出場し、初優勝に貢献。東京オリンピック(五輪)の出場権を勝ち取った際には参加希望を明かしており、オリックスも体調次第で容認する。

◆スポーツに縁 義理の父ジーン・フォゲット氏は元NFL選手で、72年から75年までカウボーイズ、76年から79年までレッドスキンズでプレーした。

◆尊敬する人物 ヤンキースで活躍し現在はマーリンズの最高経営責任者を務めるデレク・ジーター氏。

◆素手 フリー打撃は感触を確かめるために素手で行うのが主流。メジャー通算449本塁打の元同僚、ウラディミール・ゲレロ氏(44)から教わった。

◆サイズ 188センチ、98キロ。右投げ右打ち。

<ジョーンズのここまで>

◆来日 1月26日、関西国際空港に到着。予想以上にファンが殺到し、警備員の数も増やした。

◆大阪探検 来日翌日の1月27日には大阪・道頓堀を探索。妻とフェイスタイムで通話しながら「アメージング!」と街を歩いた。

◆朝活 1月28日は大阪・舞洲で午前8時30分から始動。打撃練習などを行った。

◆やる気満々 1月29日も舞洲で体を動かし、「監督と話して2月9日(紅白戦)に出られれば出たい」と意欲を明かした。

◆宮崎入り 1月30日にキャンプ地宮崎入り。黒スーツにダイヤモンドピアスが映えた。

◆異例の自主トレ 1月31日のキャンプ前日に外国人選手では異例の自主トレを敢行。「雰囲気を感じたかった」とにっこり。

◆慣らし運転 キャンプ初日のフリー打撃で61振し、柵越えは2連発を含む7本。「しっかり捉えることだけを考えた」とさらり。

◆ファン呼び込む? キャンプ2日目は異例の観衆1万2000人を集めた。吉田正も「ジョーンズ効果ですね」とニッコリ。

打撃投手に一礼するジョーンズ(右)。左はロドリゲス(撮影・前岡正明)
打撃投手に一礼するジョーンズ(右)。左はロドリゲス(撮影・前岡正明)