阪神が序盤の劣勢をはね返せずに、広島3連戦の初戦を落とした。V字回復の立役者となった4番大山悠輔内野手(25)は5打数無安打と精彩を欠いた。

広島前監督で日刊スポーツ評論家の緒方孝市氏(51)は再び勢いを取り戻すための鍵として、持ち味の積極的姿勢を崩さないことを挙げた。

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5、7、9回と大山は得点圏に走者がいる状況で1本でなかった。もともと調子を落とした時は、左肩と左足が一緒に開く。左肩が捕手側に入るひねり、いわゆる割れの動作がなくなる傾向にある。好調時は、一発で仕留められていたはずだが、ファウルになったり、空振りになってしまう。あれだけ打っていれば、マークされるのは当然。甘い球も来ない。

ただ1つ言いたいのは、積極的に打つ姿勢が、彼の一番の持ち味だということ。それを絶対に崩してはいけない。凡打になるかもしれないが、あの打ちにいく姿勢、集中力を持って1球目から狙っていく姿勢は打者にとって、最も大事だ。投手もそれを感じ取って「甘いコースに投げられない」とギリギリのコースを狙う。それがボールになり、打者有利のカウントを作れる。

開幕直後、チームは最大で「8」も借金を背負いながら、巻き返した。その原動力になったのは、4番大山だ。功績は大きいし、主軸を張るだけの力はついている。ただどんな打者でもシーズンすべてにおいて、好調が続くわけではない。今は疲労もたまり、好調時と比べて、微妙なズレが生じているかもしれない。疲れから、構えが変わり、始動が遅くなることもある。力が入って、スイングの軌道も変化する。

レギュラーは試合に出続ける中で、練習量を増やして調整するのは難しい。短い時間で集中して打席に入る必要がある。データ面など頭を整理して、積極的な姿勢を持って、打席に向かうと、また状態は上がってくるはずだ。4番は周りの声を浴び、プレッシャーとの戦いもある。一流打者はそこをみんな、乗り越えている。本人が気付かないところで、コーチからのアドバイスを受けて、きっかけをつかむのも1つだろう。

4番という打順に必要以上にこだわる必要はないが、よほど状態が悪いなら、打順を変更するよりも、休養させて、打ち込ませるなどの選択肢もある。いずれにしても、大山であれだけ勝った。いい時もあれば、悪い時もある。これからチームを背負い、引っ張る存在にならないといけないし、そういう存在になれる。そこは期待していい部分だ。周囲の声に振り回されず、ここを何とか乗り越えてほしい。(日刊スポーツ評論家)