アッという間に終わった日本シリーズ。選手の能力も層の厚さも桁違いでソフトバンクの強さばかりが際立っていた。今試合も先発させた和田を2イニングで降板させた。リードを奪った展開で実績のあるベテラン左腕を降板させるところに、層の厚さを感じさせるし、リリーフした松本も150キロを超える真っすぐで巨人打線を力でねじ伏せた。攻撃でも初回、やっとの思いで先取点を奪った巨人をあざ笑うかのように柳田が逆転2ラン。得点差以上に、巨人には永遠に勝ち目がないように感じさせる圧勝で締めくくった。

セ・リーグを独走で優勝した巨人が、完膚なきまでにたたきつぶされた。これは巨人だけの問題ではない。今季はコロナの影響で変則的なシーズンになったが、開幕前に首をかしげるルールが採用された。パ・リーグでは首位と2位の間でCSが行われると発表されたが、セ・リーグはなし。CS制度が導入されてからの歴史を振り返ってほしい。パだけがプレーオフを開催していた04~06年の日本シリーズは、3年間でセが全敗している。そしてファーストステージを勝ち上がってきたチームは強く、CSファイナルで首位チームに1勝のアドバンテージが設けられたほどだった。

ただでさえ弱いと言われるセがCSを導入しなければ、パ・リーグを勝ち上がってきたチームに勝ち目がない。今シリーズでも巨人はCSで選手の状態を見極められなかった。ケガで離脱していた亀井をスタメン起用し、2戦目で今村を先発させた。どういう意図で起用したのかに疑問はあるが、ぶっつけ本番のような形にならなければ、見極められたかもしれない。

ここ数年の交流戦でもパが圧倒。個人名は挙げないが、パで活躍できなかった選手がセで活躍し、セからパへ移籍した選手の活躍数を圧倒している。どこを比べてもパが強いのに、セだけがCS制度を導入しないのは「なんとしてもパとの差を詰めなければいけない」という危機感がないと言われても仕方がない。

個人的にDH制の方が面白いと思っているが、DH制の導入がリーグのレベルアップにつながるという確証はない。しかし、リーグのレベルを上げる可能性があるなら導入するべき。スカウティング、チーム編成、トレーニング施設、練習内容なども練り直し、どうやったらパに追いつけるかを、もっと真剣に考えるべき。「巨人の打者が速い真っすぐが打てない」と指摘してきたが、速い球を投げる投手そのものが、セには少ない。セ・リーグ全体でレベルの向上を考えないと、日本一の栄冠はパ・リーグのチームの独壇場として続くだろう。(日刊スポーツ評論家)

ソフトバンク対巨人 マウンドで記念撮影するソフトバンク投手陣(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対巨人 マウンドで記念撮影するソフトバンク投手陣(撮影・岩下翔太)