開幕41試合で借金14。DeNAが早くも自力V消滅の危機に陥っている。三浦大輔新監督を迎え、新たなスタートを切った今季だが、ここまでの不振の原因はどこに、そして浮上の可能性は…。本紙評論家の宮本慎也氏が迫った。

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ここまでDeNAは、巨人に1勝もしていない。それだけにどんな試合になるかをひそかに注目していたし、雨で中止になって残念な気持ちが残っている。不幸中の幸いというか、日刊スポーツが試合もないのに私の思いを紹介してくれるというので「勝てないDeNA」について、私なりの「考え」を話してみたい。

前日の試合は終盤に逆転しながら、土壇場の9回表に追いつかれて引き分け。正直な感想で言えば、勝てた試合だし、勝たないといけない試合だった。そして勝てた試合で引き分けに終わるところに、現在のDeNAの“弱さ”がある。

9回裏2死、桑原の打ったフライを中島と若林が“お見合い”。しかし、桑原は打った瞬間からある程度のスピードで走っていれば二塁打にできた状況にもかかわらず、一塁でストップとなった。

このプレーは間違いなく「怠慢プレー」か「ボーンヘッド」に分類される。お粗末なプレーだが、個人的に桑原は一生懸命にプレーしたと思っている。「そんなわけねぇだろ!」とおしかりを受けそうだが、よく考えてほしい。土壇場で追いつかれた試合で、サヨナラ勝ちすればチームに勢いはつく。それに桑原はレギュラーを確約されているような選手ではない。おそらく「打ちたい」という気持ちが強すぎ、打ち損じた瞬間に落胆し、走るのを忘れてしまったのだろう。

このような選手が多くいるチームは強くならない。言い方を変えると、弱いチームにはこの手の選手が多い。簡単に言うと、一生懸命にやるとそれだけに頭がいっぱいになる。だからイージーミスでなくても応用の利いたプレーはできないし、うまくいかなかったときにポカをやるからだ。

桑原に限ったプレーではない。巨人との開幕戦でもあった。初回の守りで、無死一、二塁からショートの頭上をハーフライナーが飛んだ。左翼手の佐野が捕球し、カットに入った遊撃手の柴田に送球したがワンバウンドになって後逸。ボールは本塁方向に転がり、三塁でストップしていた走者がホームインした。

送球ミスした佐野にも、捕球できなかった柴田にも責任はある。しかし一番の責任者は、中継ミスをバックアップしなければいけない三塁手の宮崎だった。走者がホームを狙わずにオーバーランしたため、三塁ベースのカバーに入ったのだろうが、ここはカットマンの捕球を確認してからのプレーでないといけない。開幕戦で緊張したのだろうが、一生懸命にアウトにしてやろうと思ってカットマンの捕球確認を忘れたのだと思う。

桑原にしても宮崎にしても、普段から一生懸命にプレーする習慣や環境があれば、結果は違っただろう。一生懸命にやってもミスは生じる。しかし一生懸命にやって生じるミスは、反省のしようがあるし、技術不足なら練習すればいい。走塁やカバーディフェンスなども、普段から一生懸命にやっていれば勉強できるし、緊張していても忘れないで動けるようになる。負けられない試合や緊張する試合だけ一生懸命にやろうとするから、大事な場面でミスが起きる。

そうした一生懸命のプレーを厳しく要求すると、弱いチームは不平不満の声が上がる。チームのムードが悪くなる。特に実績のあるベテランや外国人選手の手を抜いたプレーに対して厳しく注意するとふてくされる。だから見てみないふりをするケースが増え、チームは強くなれない。

若手の教育で叱りつけても、注意できない選手がいると効果は薄くなる。全力で走らない選手の理由には「疲れていいプレーができなくなる」や「ケガをしないため」があるだろう。もちろん、ケガをしながら出場している選手は仕方ない。それでも「一生懸命にやっている演技」ぐらいはうまくやらせてほしい。

DeNAはベテランは少なく、さらに手本になるようなベテランはいない。今季はオースティンとソトは2軍で調整せず、1軍の代打出場でチームに合流。詳しい事情は分からないが、同じ右打者で代打出場のみの選手が2人もいたらベストな戦いはできない。チームの勝利より、特別扱いを優先するようでは、他の選手に示しもつかなくなる。

大金を使って選手を集めれば、黙っていても競争力は高くなり、ある程度は強くなれる。しかし補強費がそれほど使えないのなら、根気よく、厳しく指導を続けるしかない。三浦監督も我慢の日が続いているだろう。個人的にはそうやってたたき上げて強くなったチームを応援したいと思っている。(日刊スポーツ評論家)

DeNA三浦大輔監督(2021年4月2日撮影)
DeNA三浦大輔監督(2021年4月2日撮影)