投手のことは「信頼」しても「信用」してはいけない。分かっていると思っても、試合中に確認を続ける必要がある。楽天バッテリーは、配球の前にやるべき「配慮」に欠けて、痛い失点を喫した。

2回に2点を先制した直後。岸-炭谷のバッテリーは、前日に高めの直球で同点ソロを許したエチェバリアに対して、2ボール1ストライクから高めの直球を中前に運ばれた。得意な高めに不用意な1球だった。

2回裏ロッテ無死一塁、中前打を放つロッテ山口(撮影・菅敏)
2回裏ロッテ無死一塁、中前打を放つロッテ山口(撮影・菅敏)

続く6番山口は積極的な打者。初球の入りが大事なところで、高めに甘めの直球を投げ、中前打で無死一、三塁とピンチを招いた。直後の併殺打の間に1点差に迫られた。

勝つしかない楽天にとって、結果的に重く響いた序盤の失点。データを頭に入れていたなら防げた1点だった。炭谷はもっと低めを意識させるなど「配慮」が必要で、岸も注意深く投げるべき。リードには配球だけではなく、意思表示、ジェスチャー、声がけ、テンポづくり、すべてが含まれる。

7回裏ロッテ2死、右越えに同点の本塁打を放つマーティン(撮影・菅敏)
7回裏ロッテ2死、右越えに同点の本塁打を放つマーティン(撮影・菅敏)

1点リードの7回は2死からマーティンに対して本塁打だけは避けたい場面で、フルカウントからインコースを狙った直球が、ど真ん中に入って同点ソロとされた。前日、同じような状況でエチェバリアに本塁打を打たれたのに、2試合連続で同じ過ち。投手は最悪フォアボールでもいいと思って対峙(たいじ)しないといけないし、捕手は失投になっても本塁打にならないリードが必要。打たれないことより、ストライクを投げることが前提の攻めに見えた。2試合連続で同じようなミスをすれば、勝つことは難しい。

配球の前にあるべき「配慮」と「丁寧さ」を欠いた。ロッテも勝ち越した直後の7回に同じようなシーンがあった。

9番炭谷に対して、初球の高めツーシームを左中間に運ばれる同点ソロを許した。6回までのできを考えれば小島の続投は当然だが、簡単にストライクを取りにいったように見えた。捕手の加藤も甘めなコースに構えているだけ。9番とはいえ、2回にタイムリーを打っている炭谷に対して、丁寧さに欠ける入りだった。それを口火に、一時逆転を許す展開になった。

短期決戦は1球ですべてが変わる。私自身も身をもって経験しているだけに、特に気になった。ロッテは2試合でファイナルステージ進出を決めたことで、オリックス山本に対して、石川をぶつけられる。下克上への条件は整った。(日刊スポーツ評論家)

ファイナルステージ進出を逃し肩を落とす楽天ナイン(撮影・滝沢徹郎)
ファイナルステージ進出を逃し肩を落とす楽天ナイン(撮影・滝沢徹郎)