緊迫感のある投手戦を山本が制したのは、すべてのボールを操ることができたからだ。石川も緩急を駆使した好投だが、「剛」と「柔」を兼ね備えた山本は、さらに上をいく投球で圧倒した。

立ち上がりは勝手が違ったか、4回まで毎回安打を許すなど手探りのようにみえた。しかし、本来の投球にはまってしまうと、いくらロッテ打線がもがいても付け入るスキはなかった。

9回126球のうち、山本はほとんど若月のサインに首を振っていない。後半戦先発したすべてにマスクをかぶったのが若月で、バッテリーの“呼吸”に乱れがなかったといえる。

その証拠が、走者を得点圏に置いた1回と4回の配球にあった。1回2死二塁の4番レアード、4回2死三塁の6番山口を、いずれもカーブで見逃し三振に抑えたのは勝因だった。

確かにシーズンにもピンチの場面で緩いボールを投げ分けてきた。しかし、このような短期決戦の舞台では、1発があることを考えると、逆に捕手のほうもサインを出しにくい球種だったはずだ。

その点、サインを出す若月、首を振らない山本にも迷いはない。序盤のピンチに選択した“2球”のカーブで乗り切ったのは、バッテリーの息が合っていたからだ。また若月の成長がうかがえた場面でもあった。

それに計10奪三振のうち、5つまでだったフォークも自信を感じさせた精度の高さだ。本人が意識しているかどうかは定かではないが、「速さ」「落差」の投げ分けで的を絞らせなかった。

最近の投手は、いたずらに間をとったり、クイックで投じるタイプが多く見受けられる。しかし、山本の場合、捕手からボールを受けて、サインをのぞき、投げるまでのリズムがほとんど変わらない。

こちらがみる限り、山本がクイックで投げたのは1球だけだ。小細工のないダルビッシュ有、田中将大の域に近づいてきたようにもみえた。次戦からは打線もリラックスして打てるだろうし、オリックスは断然優位に立った。

(日刊スポーツ評論家)

オリックス対ロッテ ロッテに完封勝利、若月(左)の祝福に笑顔を見せる山本(撮影・前岡正明)
オリックス対ロッテ ロッテに完封勝利、若月(左)の祝福に笑顔を見せる山本(撮影・前岡正明)