ペナントを優勝したヤクルトが巨人を2勝1分けで退け、日本シリーズ進出を決めた。今試合は2回途中で先発した原の右手に打球が直撃。序盤は嫌な展開になったが、緊急登板となった金久保が3回2/3を1失点に抑えるなど、リリーフ陣が踏ん張りを見せた。シーズン終盤で見せたヤクルトの“しぶとさ”を改めて証明した内容だった。その一方で阪神に2連勝してCSファイナルに乗り込んできた巨人は、まったくいいところを見せられずに終わってしまった。

今試合のポイントは、先発して好投していたメルセデスの交代機だった。巨人が1点をリードした7回、先頭打者のメルセデスに代打の八百板を送った。シーズン中の戦いであれば、継投のタイミングはよほどの根拠がなければ評論しにくい面がある。裏目に出た時でも、長いシーズンの戦いだという点を考慮するとメリットも考えられるからだ。しかし今試合のメルセデスの交代機は疑問を感じた。

6回を投げて打たれたヒットは1本。4四死球を与えていたが、慎重になりすぎていただけで、制球力が悪かったわけではない。球数は80球。微妙な数だが、疲労から球が抜けていたわけでもなかった。メルセデスの状態より、代打を出して追加点を奪いにいくことを重視したのだろう。しかし、このタイミングでの交代は、ヤクルトベンチからすれば「しめた」と思ったはず。勢いづかせる結果になった。

短期決戦を考えれば、もうメルセデスの登板は考えにくい。目いっぱい投げさせていい状況であり、最小得点差とはいえ、リードしている状況だった。得点圏に走者がいるような場面での代打なら理解できるし、続投させてピンチを迎えた場面なら理解できる。しかし、この状況は守りを重視して我慢するべきだっただろう。

動かなければいけない状況にチームを追い詰めたのは「打てない打線」が原因に挙げられる。打撃に関しての技術力や能力が足りないなら仕方がないが、それ以外の部分があまりにも無策すぎる。2回2死一塁から松原は、カウント1-2からフォークを空振り三振。真っすぐが3球続いて追い込まれただけに「そろそろフォークかな」という予測をしてもいい。さらに4回は無死二、三塁になり、1ボールから犠牲フライを狙う場面で低めのボール臭いチェンジアップをファウル。カウント3-1からも高めに浮いたスライダーを強振してファウル。ヒットでなくても得点を狙える場面で、三振に倒れ最低限の仕事もできなかった。

松原だけではなく、6回は先頭打者の大城がフォークを空振りして3球三振。クリーンアップを打つような強打者が強振するのは理解できるが、それ以外の打者が主砲のような打撃をしていたら得点力は上がらない。来年以降の大きな課題になった。

ただ、ヤクルトOBという立場を度外視しても、シーズン優勝を果たしたチームが日本シリーズに進出して本当によかったと思う。セ・リーグはパ・リーグに連敗中。セの代表として頑張ってもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

CSファイナル ヤクルト対巨人 スタンドにあいさつに向かう巨人ナインたち(撮影・加藤哉)
CSファイナル ヤクルト対巨人 スタンドにあいさつに向かう巨人ナインたち(撮影・加藤哉)