戦力的に両チームの差は拮抗(きっこう)していると思っていた。しかし4戦目になって、ヤクルト打線の圧力が、オリックスバッテリーを押し込みはじめている。ここまで試合はすべて接戦になっていたが、4戦目のヤクルトの1点差勝ちは、打線の圧力の差が出た試合になった。

勝負を分けたのは、6回の攻防だった。1点をリードしたヤクルトだが、6回表2死一塁で宗の右前打を右翼サンタナが後逸。チャージも甘かったし、ファンブルしてからの動きも緩慢で、一塁走者の福田が“まさか”のホームイン。技術的に未熟なエラーであれば仕方ないと切り替えられるが、完全な油断から生まれた凡ミス。同点とはいえ、ヤクルトからすれば嫌な失点になっていた。

ところが、その裏からリリーフした増井が先頭打者の山田に四球。次打者の村上は一直でラッキーな併殺で2アウトとなったが、再びサンタナに四球を与えた。この後、中村、オスナの連続安打で、決勝点となる1点がヤクルトに入った。

嫌な流れで同点に追い付かれていたヤクルトが、一気に流れを変えたのは先頭打者への四球と2死からの四球だった。オリックス側からすれば最初の先頭打者への四球で嫌な感じがしたはずだが、ラッキーな併殺。これで助かったと思った直後に、再び四球。守っている野手からすればダブルのショックだし、攻撃しているヤクルトは「まだいける」と思ったはず。この勢いが、決勝点につながる連打を生んだ。

流れを変えた2四球だが、いずれの四球もフルカウントから、投げた瞬間にボールだと判断できるフォークだった。フォークという球種は基本的にボールゾーンに落とす球種。その球種がボールになったのだから、増井だけを責めるつもりはない。しかも増井は今シリーズ初登板で、四球を与えたのは1発のある山田と、2回にソロを放っているサンタナ。オリックスバッテリーが慎重になるのは当たり前の状況だった。

オリックスバッテリーに必要以上に圧力をかけたのが、ヤクルト打線だった。今シリーズでは初戦から積極的にバットを振っている。その圧力が捕手の若月にフルカウントからのフォークを選択させ、投手の増井へは「甘くならないように低めへ」と圧力をかけた。その結果が四球という“ミス”を呼び込んだのだろう。

一方のオリックス打線は、ヤクルトの先発石川のファーストストライクを打てなかった。6回まででファーストストライクの見逃しが13人。これならベテランの石川はどんどんストライクを投げていける。初球がボールになったのは21人中7人だけ。本来、ボール球を打たせるタイプの石川は球数が多くなるが、6回で球数は77球。若いオリックス打線がベテラン左腕の術中にはまってしまった。

3敗目を喫したオリックスは、もう後がない。苦しい立場に追い込まれたが、積極的にバットを振っていかなければ、活路は見いだせない。逆にヤクルト打線は、積極的なスイングで打ち崩せないまでも、オリックスの強力先発陣と捕手に圧力をかけている。その差が勝敗に表れている。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対オリックス 6回裏ヤクルト2死一、二塁、勝ち越し適時打を放ったホセ・オスナ(右)(撮影・江口和貴)
ヤクルト対オリックス 6回裏ヤクルト2死一、二塁、勝ち越し適時打を放ったホセ・オスナ(右)(撮影・江口和貴)