オリックス山本由伸投手(23)が自身初のノーヒットノーランを達成した。これで今季は完全試合達成のロッテ佐々木朗も含め、ソフトバンク東浜、DeNA今永に続いて早くも4度目の快挙達成。阪神、ロッテで活躍した日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)が18日、昨季まで現役でプレーした経験も踏まえ、「ノーノー続出」の背景を分析した。【聞き手=佐井陽介】

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ここまでノーヒットノーランが続くのには当然、理由があるでしょう。まず大前提として、今季は多くのチームがレギュラーを入れ替えている段階。打てなくても我慢強く若手を使っていくという流れが、快投を生み出す土壌となっているように感じます。

打者という生き物は常に受け身です。どれだけスイングスピードを上げても、投手の進化が野手のそれを上回れば、打てる確率は簡単には上がりません。一方の投手はいつだって能動的。自分がレベルアップすれば、結果に直結する可能性が高い立場にあります。

その上、投手はデータを取り入れやすい特性もあります。今ではトラックマンなどを駆使すれば、ボールのスピン量や角度がすぐに分かります。簡単に改善点を知れれば、進化のスピードが早まるのは必然です。

歴史を振り返れば、投手と打者は常に追いかけっこを続けています。たとえばバットの重さ。投手がカーブやスライダーを変化球の軸としていた頃、多くの打者は重いバットを使っていました。それが打高投低になると、投手はフォークやチェンジアップといった奥行き、縦の変化、カットボールなどの小さな変化で対抗。すると、今度は操作性にたけた軽めのバットを使う打者が増加しました。

今、もし投手の平均球速が以前より5キロアップしていたとしても、打者はいずれ攻略するはずです。ただ、現在は追いかけっこの途中、投手が先んじている時期なのだと考えられます。

さらに言えば、ロッテ佐々木朗希投手の完全試合達成もノーヒットノーラン増加に大きな影響を与えたのではないでしょうか。

人間は不可能だと思っているとなかなか壁を突き破れないのに、可能だと分かった途端に「自分もできる」となるものです。陸上の男子100メートル走を見ても、日本人選手はなかなか9秒台に突入できなかったのに、たった1人が歴史を塗り替えると9秒台の選手が増えました。プロ野球界も似たようなもの。佐々木朗希投手の偉業が、一流投手たちのリミッターを一斉に解除したようにも映ります。(日刊スポーツ評論家)

西武対オリックス ノーヒットノーランを達成したオリックス山本(撮影・丹羽敏通)
西武対オリックス ノーヒットノーランを達成したオリックス山本(撮影・丹羽敏通)