キャンプ中、広島鈴木誠也は連日ファンに囲まれ、時間が許す限りサインをしていた。「立派だな」と思って何となく見ていたら、思わず手元に目がいった。明らかにペースが速い。書かれたサインを見せてもらうと、以前と形が違った。聞けば1月中旬の自主トレ中から変えたのだという。

 「前のサインは、徐々に形が崩れていって…。いろんな人に、なんて書いてあるの? って聞いてもらっても、自分でも説明出来なくなったんです。自分で(初期と)見比べても全然違いました(笑い)」

 新しいサインは「シンプルに誠也です」。見比べると、以前のサインの面影も残っていた。一気にブレイクした16年はペンを持つ機会も大幅に増えた。一方でファンサービスも丁寧な男。1枚でも多く書きたいという気持ちもある。速記と書き過ぎで、形が崩れるのも必然だった。さらさらと書き「書きやすくなりましたよ」とにっこりだった。

 引退した黒田氏も、ドジャース前田も活躍するにつれてサインは簡略化されていった。鈴木は「一番は何となく。気分転換です」と笑ったが、鈴木誠也の活躍の歴史はサインでも読み取れるかもしれない。【広島担当=池本泰尚】