「野球は物語-」と、日本ハム栗山監督は言う。6月11日は感動的なドラマを目の当たりにした。村田透投手(32)がプロ初勝利を挙げた。メモリアル勝利の相手が巨人だ。10年前の07年ドラフトで1位指名してくれた球団であり、結果を出せずに3年間で戦力外となった球団でもある。ヒーローインタビューで、村田は言った。涙声だった。「プロの世界でやるために(土台を)築いた…僕の大事な3年間でした」。

 米国で閉ざされかけた野球人生を切り開いた。11年から、英語も分からないままマイナーリーグで己を磨き始めた。15年にはメジャーのマウンドにも立った。その姿に日本球界からオファーも届くようになり、昨オフに日本ハム入りを決断した。

 10年前と立場は変わった。即戦力として期待された過去から、請われてやってきた助っ人的な立ち位置になった。お立ち台で語った「自分がチームを引っ張っていくピッチングがしたい」との思いは、紆余(うよ)曲折を経て、はい上がってつかんだ現在地を示している。

 3482日。村田がドラフト指名から日本での1勝をつかむまでに要した日数だ。長かったが、最終目標が達成されたわけじゃない。「巨人の時、優勝しても、自分はずっと2軍にいたので何の貢献もしていない中で、チームは盛り上がっているわけじゃないですか。やっぱり、その輪の中にいたいので」。人の心を動かす村田のドラマは、まだまだ続きがある。【日本ハム担当 木下大輔】