笑顔を作ったのにはワケがある。16日、広島大瀬良は阪神藤浪から左肩付近に死球を受けた直後、マウンド上に笑いかけた。一夜明け、大瀬良と話した。「無意識ですね。とっさに『大丈夫!』と声に出してました。晋太郎の顔が青ざめていたから…」。ふと、数カ月前に送られた1通のメールを思い出した。

 記者は大瀬良が入団1年目の14年に広島担当。阪神担当に戻った15年からは藤浪を取材させてもらっている。2人は15年1月に自主トレを共にして以来、親交が深い。そんな縁もあって、何度となく2人が語らう場に居合わせたことがある。「大地さん」「晋太郎」と呼び合う2人の投手談議はいつも白熱する。

 そんな仲だから、大瀬良は開幕から藤浪を気にかけていた。そして春先のある日、制球に苦しむ姿を心配して、意を決して1通のメールを送っている。

 「その気持ち、オレも分かるよ」-。

 グラウンドに立てば敵同士。でも、互いに苦悩をさらけ出し合ってきた良きライバルでもある。だから負けないでほしい。立ち直ってほしい。苦悶(くもん)の表情より笑顔を選んでくれた先輩の優しさが、藤浪に伝わらないわけがない。【阪神担当 佐井陽介】