日本ハム大田泰示が、苦しみから脱した。9月13日のロッテ戦から同18日のオリックス戦まで、20打数2安打、8三振。ボールが前にすら飛んでくれなかった。特に12打席無安打だったオリックス3連戦は、状態が深刻なことが見て取れた。

 不振に陥ったときでも、毎試合出場を続けるという経験が、巨人に在籍していた昨年までの大田には、なかった。スタメンで使ってもらっても、結果がでなければ次戦はベンチをあたためる。そして2軍に降格する。それも厳しい境遇なのだが、ファームではじっくりと練習で汗を流すことができる。自分の打撃を見直す時間がある。だが毎日試合に出続けるとなると、そこまでの余裕がない。だから、どう復調してくるのかに注目していた。

 大田はただやみくもにもがくのではなく、ポイントをひとつに絞った。「今日は右方向に打つことだけを心掛けよう」、「今日はとにかく思い切り振ってみよう」。対戦相手の投手によってテーマは変えたというが、いろいろ考えるのではなく、その日その打席でやることを明確にした。頭の整理ができていれば、結果は凡打でも、自身の取り組みに沿ってやれたと納得もできる。「もちろん試合後は悔しいんですけど、切り替えることができるというか。徐々に感覚もよくなってくる」。同19日の楽天戦で2安打を放つと、そこから3試合連続安打。本来の打撃を取り戻していった。

 いじわるな質問もしてみた。結果が出ないとき「うわ~また今日も試合か…」と後ろ向きになったことはないのか? と。「そうはならないですよ。だって試合に出られる喜びがありますもん。ジャイアンツで2軍にいて、ずっと試合に出たいと思っていた。そのときいい経験ができたから、使ってもらえるありがたさを感じています」。試合に出場する充実を心から感じている選手。長いシーズンは山あり谷ありだが、常に前向きに野球と向き合う大田だから、野球の神様は見捨てない。【日本ハム担当=本間翼】