「パー、トントン、クルッ」って知ってますか。幼児向けに野球の投球動作を教える方法です。「パー」の合図で目標に向かって横を向いて足を開く。「トントン」で利き手で握ったボールで頭頂部付近を軽くたたき、「クルッ」で正面を向いてボールを投げる。こうやって教えてもらい、親バカですが、幼稚園児の息子の投げ方は見違えるほど格好良くなりました。

 日本野球機構(NPB)は19日、神宮外苑の室内練習場で「未就学児を対象とした“野球遊び”体験のための勉強会」を開催した。ロッテ、DeNA、巨人の指導者が、親子や12球団の担当者、アマチュアの関係者らに投げ方などの基本を教えた。小学生ならともかく、未就学児に投げる動作を伝えるにはコツがいる。「パー、トントン、クルッ」と分かりやすく表現するのはそのためだ。

 88年にロッテでパ・リーグ首位打者に輝いた高沢秀昭氏(59)は言う。「子供たちに分かりやすいように擬音、擬態語を使っています。トントンで肘が自然と肩の高さに上がります。クルッで体を回すことを覚えてもらいます」。擬音を交えて手本を見せ、故障しないフォームを覚えてもらいたいという。

 06年に「ジャイアンツアカデミー」を立ち上げた巨人の取り組みは12球団の最先端を行く。少年向けスクールで先行していたJリーグの東京を参考にコーチは半分はプロ選手経験者、半分は教員免許保持者。未就学児には野球の技術より、教える技術が求められるというわけだ。東海大でコーチングを学んだ望月舞子氏(27)は「言葉をかける際、視界に私しか入らないようにしています。親を逆方向にして。桜が散る時季はそれも避けます」。そうやって気が散りやすい幼児の関心を引きつける。見事な教え方に他球団の担当者からは「ウチにほしい」と声が上がっていた。

 ファンの拡大には、なるべく早い時期に興味を持ってもらうことが重要だ。勉強会に参加した楽天の担当者は「9歳までに体験したものが生涯の興味に大きく影響する」と、大リーグのレッドソックスの研究成果を発表した。プロアマ一体の普及活動でサッカーに負けまいと、NPBは未就学児向けの指導マニュアルを作成中だ。【斎藤直樹】