ソフトバンクは球団創立80周年の今シーズン、厳しい戦いを強いられている。工藤ソフトバンクは前夜(12日)、6発の本塁打を放ち日本ハムに大勝。同カード2勝1敗の勝ち越しで再び勝率を5割に戻した。首位西武とは10・5ゲーム差。リーグ連覇へ厳しい道のりは変わらないが、正念場の夏を乗り越え、本来の勢いを取り戻してもらいたいものだ。

 チームが苦しい戦いを続ける中、ひっそりと「ホークスレガシー」が姿を消そうとしている。ホークス福岡移転後の1989年(平元)に福岡市東区に完成した「西戸崎合宿所」が解体、撤去されている。リゾートホテルを思わせる三日月型の寮に内野がすっぽりと入る50メートル×50メートルの広さを持つ室内練習場。毎年1月の新人合同自主トレは冬の「風物詩」でもあった。

 合宿所の完成から4年後の1993年(平5)には、博多湾を挟んだ対岸に日本初の開閉式ドーム球場「福岡ドーム」(現ヤフオクドーム)が完成。多くの若鷹が波の向こうに見えるドームでの活躍を胸に誓って汗を流した。「朝起きて、2階の洗面所で顔を洗っていると、窓からドームの建設現場が見えていました。絶対にあそこで活躍してやるぞ、そんな思いでいつも朝は気合を入れていましたね」。90年ドラフト6位で入団した村松外野守備走塁コーチは、当時を振り返って懐かしんだ。

 福岡・筑後市に建設された新ファーム施設の誕生で、「西戸崎合宿所」の役目は終わった。夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡…。今年中には更地となって地権者に戻される予定。来季は福岡移転30シーズン目で球団側も創設80周年に続き記念イベントを企画しているが、平和台球場も今はなく、象徴的な施設がまた1つ消えることになった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】