<オリックス5-8ソフトバンク>◇25日◇京セラドーム大阪

両手を大きく広げて宙を舞った。実直な王さんらしい優勝の舞だった。ダイエー(現ソフトバンク)の監督に就任して5年目にたどり着いた「有終の美」だった。1999年(平11)9月25日。本拠地・福岡ドームで世界の王が屈辱の歴史にピリオドを打った。ホークスが大阪から福岡に移転して11年目。南海時代から数えること26年ぶりのペナント制覇だった。

苦い日々を重ねてきた。王ダイエーは多難な船出だった。シーズンは花開かず「オフの王者」とささやかれてきた。ふがいない戦いぶりに選手バスに生卵がぶつけられる事件もあった。その夜のミーティングで王監督は言った。「彼らが一番のファンなんだ。勝てば喜んでくれる」。ホークスナインの手で押し上げられた背番号「89」は「この宇宙でただ1人だけ浮かんでいるような気持ち」と酔った。

あれから19年の月日が流れた。メモリアルの福岡移転初Vをノスタルジックに思い出すこともないほどチームは強くなった。王さんからバトンを渡された秋山監督が3度、そして工藤監督も2度リーグ制覇。「常勝」は今やホークスの代名詞ともなった。

負けられないチームはこの日も勝った。監督辞任が明らかになった福良オリックスに完勝。とはいえ、仙台では獅子が土壇場の逆転劇。明日27日からは今季、最大の正念場となる敵地・所沢での西武3連戦。この日の快勝が、奇跡への逆転Vロードと続くのか…。「初V記念日」の1勝は大きかった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】