自分と他人を比べても意味がない。性格、持ち味、得手不得手、人それぞれなのだから。他人との比較に心をわずらわせるより、自分が出来ることをやろう。私がそう思えるようになったのは、やっと40歳を超えてからだ。以来、生きるのがグッと楽になった(気がする)。

もっとも、常に競争にさらされるプロ野球の世界では、そうはいかない。6日、西武でも秋季キャンプが始まった。1軍主体の宮崎・南郷組とは別に、2軍主体の残留組が松井新2軍監督の下、西武第2球場で来季へ向けて動き始めた。

連日のようにブルペンに入っているのが、今季で3年目を終えた左腕、藤田航生(こうき)投手(20)だ。サイドから直球中心に投げ込んでいるが「前ほど、しっくり来てないんです」と打ち明けた。

弘前工からドラフト9位で入団。この春までは、スリークオーターだった。が、2年目を終え、2軍でも思うような成績が残せない現状に「このままじゃ厳しい。何か特徴を出さないと」と危機感を覚えた。出した結論が、サイドスローへの転向だ。「いろんな人に相談しましたが、最後は自分で決めました。もともと、下半身が横回転なので、それなら横から投げた方がいいかな、と思いました」と意図を話した。

今季は2軍戦13試合で1勝0敗、防御率4・15。まだ満足は出来ないが、昨季(3試合1勝1敗、防御率18・00)と比べたら、着実に前進したと言える。「秋キャンプも(残留組の)こっちですけど、来年こそ、1軍に上がれるように」と意気込んでいる。

サイドスロー左腕といえば、西武には清川2軍巡回投手コーチがいる。同コーチも、1軍で生き残るために、プロ入り後、自らサイドに転向した。藤田の決断に「どうやったら1軍に、と考えたのは良いこと」と目を細め、続けた。「左のサイドも増えてきたけど、まだまだ希少価値があると思う。日本シリーズの(ソフトバンク)嘉弥真なんか、投げ方自体が武器になっていたよね。藤田の場合、これまでと違う投げ方で体が張っているのかも知れない。これを乗り越えたら、指にかかったボールがいくようになるはず」とエールを送った。

二十歳にして、自分と他人を比べ、決断を下した藤田。結果が実るかは、またこれからの頑張りなのだろうけど、現状を打破するために考え、動いたことに意味があるのだと思う。プロ野球を取材していると、年齢に関係なく学ばされることが多い。そんなことを不惑過ぎの記者は思った。【西武担当 古川真弥】