積み上げた年数と経験は、言葉ににじみ出る。来季39歳を迎える楽天渡辺直人内野手は、じっと目を見つめて言った。

渡辺直 うまい選手ではなく、強い選手が出て来てほしい。逆境に立ち向かう。そういう選手が出てくれば、日本一になれると思う。自分自身でもやっていることだけど、言い訳をしない。そういうところが大事だと思う。

200万円増の1700万円で契約を更改し、会見場に「失礼しま~す」と元気に入室した。来季の目標に「レギュラーを取る。二塁。あ、違うか」と西武時代の後輩で、FA移籍が決まった浅村のポジションを挙げ、笑いを取った。シーズン中の内野ノックでは、20歳も年上の真喜志ヘッドコーチを“いじって”和ませる。そんな普段とは全く違った勝負師の顔だった。

06年に楽天でプロ生活をスタート。10年オフ、金銭トレードで横浜に移った際には、嶋を筆頭に多くの選手が「絶対に出してはいけない人」と声を上げ、人前で涙まで流した。13年途中に西武にトレード移籍し、昨オフに戦力外を経験。8年ぶりに復帰が決まると「本当に良かった」とわが事のように喜ぶ選手がいた。

地獄を見たからこそ、勝負の世界の厳しさは、体に染み込んでいる。

渡辺直 お金はいくらでも良かった。楽天に復帰させていただいて苦しいシーズンではあったけど、本当に野球をやっている感がすごくあった。悔しいとかうれしいという気持ちで野球が出来て、すごく幸せだった。

「松坂世代」の1人。同学年の杉内、村田らが現役を退く中、同僚の久保、阪神藤川ら、まだまだ元気な選手もいる。「正直なところ、まだまだワクワクしているし、燃えている。イーグルスで野球をやるっていうことが最高の幸せなので」。野球を愛し、仲間からも愛される38歳。そんな男の言葉には重みがある。(金額は推定)【栗田尚樹】