広島エリック・シュールストロム駐米スカウト(49)が優良助っ人を獲得し続けている。今年はカイル・レグナルト投手(30=メッツ3A)とケーシー・ローレンス投手(31=マリナーズ)を入団させた。「いい仕事」の源には、強い広島愛がある。

広島との縁が生まれたのは15歳のとき。地元カリフォルニア州アラメダ代表野球チームの一員として、初来日した。2週間で福岡、名古屋、広島、大阪、東京をホームステイしながら回ったが、最も印象に残ったのが広島だったという。平和公園を歩き、原爆ドームや平和記念資料館を見学した。「1泊しかしていないのに、すごく心を動かされた」と振り返る。

不思議な縁は続く。98年に日本ハム入りした同氏は2年で解雇され、米国で右肩の大手術を受けた。関節唇が破れており、回旋筋腱板(けんばん)に4、5カ所の裂け目が見つかったからだ。肩峰突起という骨の一部も切り取った。「野球をあきらめた。人生が終わった気がした」。バーテンダーとして1年を過ごしたころ、入団テストの誘いを受けた。カープだった。術後はボールをにぎっていなかったが、痛み止めを飲んで臨み、合格した。

2年後に現役を引退した際、もう1度カープに誘われ現職に就いた。日本の球団が駐米スカウトを置くことは、米球界で認知されていない時代。仕事は困難を極めたが、遮二無二働いた。その働きを、カープが敬意を持って認めてくれることが支えだった。引退直後に結婚した広島出身で日本人の妻にも助けられた。そして16年が過ぎ、球界NO・1の国際スカウトといわれるようになった。

シュールストロム氏はカープについて、こう話す。「広島の一員でいることはとてもうれしい。松田オーナーも、松田オーナー代行も、鈴木常務も広島の街も、チームも大好きだ。広島は私の人生そのものなんだ。広島や妻のおかげでこうしていられる。他のチームで働くつもりはまったくない」。

かつてドジャースの殿堂入り監督トミー・ラソーダ氏は「I bleed Dodger blue(私にはドジャー・ブルーの血が流れている)」と語った。その話を聞いたとき、チーム愛を表すのに、こんなにおしゃれで激しい表現があるのかと思ったものだ。そうすると、こうも言えるはずだ。シュールストロム氏には、間違いなくカープ・レッドの血が流れている。【広島担当=村野森】

1月、入団発表会見を終え、意気込みを見せる新外国人レグナルト(左)とローレンス
1月、入団発表会見を終え、意気込みを見せる新外国人レグナルト(左)とローレンス