<日本生命セ・パ交流戦:ソフトバンク6-4中日>◇4日◇ヤフオクドーム

親父は一生懸命にマウンドを踏み固めた。レーキで黒土をならし、丁寧に投球の踏み出し位置をならした。交流戦初戦の中日戦。試合直前のグラウンド整備。ヤフオクドームのグラウンドキーパーに1人の「助っ人」が加わっていた。

ソフトバンク対中日 入念に? マウンドを整備する阿知羅の父(撮影・栗木一考)
ソフトバンク対中日 入念に? マウンドを整備する阿知羅の父(撮影・栗木一考)

粋な計らいだった。「助っ人」は、中日先発阿知羅の父・治朗さん(59)だった。地元宮崎市から息子の応援に駆けつけた。夫人とともに車を飛ばして球場入りすると、サプライズが待っていた。ドームスタッフから試合前のマウンド整備をお願いされた。治朗さんは宮崎・生目の杜で14年間にわたってホークスキャンプのグラウンド整備を行ってきた。今年春のキャンプもV奪回を目指すチームを支えてきた。チームにとっては「仲間」でもある。

ソフトバンク対中日 ソフトバンク打線を相手に力投する阿知羅(撮影・栗木一考)
ソフトバンク対中日 ソフトバンク打線を相手に力投する阿知羅(撮影・栗木一考)

「(ヤフオクドームで)息子が先発するなんてね。交流戦は2年に1度しかこっちで試合をやらないし、それも6人先発投手がいる中で、息子に回ってくるなんて。ほんとすごい確率です。奇跡ですね」。ホークス党でもある治朗さんにとって、複雑な心境だが、そこはやっぱり親父の顔になる。5月5日の「こどもの日」。阿知羅はヤクルト戦(ナゴヤドーム)で先発し、プロ6年目でうれしい初勝利を手にした。メモリアル白星は、チームの「令和初勝利」でもあった。

勝負の世界は厳しい。息子は初回に3本塁打を浴びるなど5回5失点で負け投手となった。「とにかくケガをしないでやってほしいですね」。治朗さんは言った。交流戦が生んだ「夢の時間」だった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】