ちょっと気になっていたので、「ウワサの真相」を確かめてみた。

発端は7月4日DeNA阪神戦(横浜スタジアム)の2回裏。DeNAの8番大和が打席に入ると、若者に大人気の男女6人組音楽グループ「AAA(トリプルエー)」の「Birthdaysong」が流れたのだ。

現在、大和は1~4打席まで毎回違う登場曲を流しているが、この「AAA」の1曲は通常流れないもの。ここで球場を訪れていた勘の鋭い虎党たちはピンと来たらしい。「これはきっと、あの選手へのサプライズだ」と。

ということで早速、大和に連絡を取ってみた。虎党が信じたウワサについて尋ねてみると「そうですよ。あれは上本さん用にかけた曲です」と笑いながらあっさり白状してくれた。

そう。7月4日は阪神上本の33歳の誕生日。古巣時代から仲が良かった1歳上の先輩に、バースデーソングを贈ったとのことだった。ファンの皆さんの予想、ズバリ的中である。

「もちろんグラウンドに立てば敵ですから一切情は挟みませんけど、せっかくの誕生日だし、登場曲で祝うぐらいはいいかなと思って」

前夜、まずは無数にあるバースデーソングの中からベストの1曲を選択。次にどの箇所を流すのかを秒単位で考え、当日担当者に「1打席目はこれをかけてください」とお願いしたのだという。実に粋な計らいを耳にして、三塁ベンチにいた上本は照れ笑いしていたようにも見えた。

上本と大和は、2人が虎でチームメートだったころから絆が深かった。互いに人間としてもプレーヤーとしても認め合い、ただのなれ合いではない、メリハリの効いたライバル関係を築いていた。

ふと思い出すのは15年秋、2人が交わした約束だ。

2人はある時、当時就任直後だった金本監督から甲子園クラブハウス内の監督室に呼ばれ、「二塁のレギュラーを争ってくれ」と伝えられた。部屋を出ると、上本は大和に「ガチで勝負な!」と笑顔で声をかけ、大和も握手で返したという。

グラウンドに立てば正々堂々と切磋琢磨(せっさたくま)し、グラウンドを離れれば友人関係に戻る。すてきな関係は今もまったく変わらないのだろう。

2人は大和が阪神からDeNAにFA移籍した17年オフまで9年間、ある時はバチバチ火花を散らし、ある時は苦悩を分かち合ってきた。

「長い間、ずっと一緒にやってきましたからね。やっぱり、お互い頑張りましょう、という気持ちは今でも強いですよ」

なにかと世知辛い時代。ほんの十数秒だけのメロディーに、なんだかほっこりさせられた。【遊軍=佐井陽介】