「僕は最後まで絶対諦めません」。右腕の声は熱を帯びていた。昨季限りで巨人を戦力外となった坂本工宜投手(25)が、NPB球団への復帰を目指しアンダースローに挑戦している。現在は無所属で、兵庫・西宮市の野球専門施設「ベースボールメディカルセンター」を拠点に、投球フォームの改善や体の使い方を学んでいる。

異色の経歴だ。関西学院高時代は控え外野手で、関学大では準硬式野球部に所属。大学2年から投手に転向し、16年育成ドラフト4位で入団した。2段モーションからやや上体をのけぞらせて角度をつける。最速150キロの直球、スライダー、チェンジアップを駆使し、昨季の開幕前に支配下登録をつかみとった。

だが、プロの世界は甘くなかった。1軍登板は2試合だけで、昨年10月1日に戦力外通告を受けた。「びっくりしました」。同年11月のトライアウトで、打者3人に無安打、2奪三振とアピールしたがNPB球団からの声はなかった。

踏みしめた大観衆の舞台に戻りたい。リスタートに伴い、進化を求めた。150キロ超えの速球を目指すのではなく、たどり着いたのは積み上げたフォームを一変させること。トライアウト後から体の使い方を一から学び、アンダーハンドで140キロ前後の球速を出せるまでになった。

巨人時代は、休日に幼少期からためたお年玉を削り「ベースボール-」への自主トレのため東京-兵庫間を何度も日帰り往復した。学生時代から撮りためた自身の投球動画でスマートフォンの容量をほぼ埋めていた。「コツコツ」という言葉がぴったりな、笑顔がまぶしい25歳。今後は独立リーグなどで現役を続行し、返り咲きを目指す。【桑原幹久】

◆坂本工宜(さかもと・こうき)1994年(平6)8月19日、滋賀県生まれ。関西学院-関学大(準硬式)を経て、16年育成ドラフト4位で巨人入団。19年3月に支配下選手登録。同年4月に1軍デビューも、10月に戦力外を受け退団。176センチ、82キロ。右投げ右打ち。