その1球で、試合の流れを引き寄せる。オリックスの左腕、左沢優投手(25)が「左キラー」に名乗りを上げる。

「自分に求められることは、左打者を抑えること。1試合でも多くマウンドに上がって、チームに貢献したい。どんな場面もチャンス。背伸びせず、自分のできることをやるだけです」

18年ドラフト6位でオリックスに入団。JX-ENEOSで磨いた直球を武器にプロの世界に飛び込んだ。左沢の持ち味は「球速以上にスピードを感じさせる真っすぐ。打者が差し込まれるストレートを生かしたい」と意気込む。

新人だった昨季は1軍で4試合に登板。防御率は0・00と収穫はあった。「やっぱり磨きたいのは、真っすぐのキレ。少し甘く入ってもファウルが取れるなとは思った。ただ、変化球の精度が課題。1軍レベルは際どいコースを全部、見送られるので。コースを狙いすぎての四球がもったいないと感じました…」。悔しいマウンドが、左沢を成長させる。「去年の(1軍)3試合目のマウンド(5月11日楽天戦)ですね。1-1の8回1死満塁で銀次さんに押し出し四球。そのまま交代。『三振欲しいな』と思ったのがいけなかった。そういう場面こそ腹をくくってやっていきたい。三振を取りにいくような投手じゃないので、もっと割り切ってアバウトに攻めていきたいと感じました」。

自身に足りないものを考え、シーズンオフには新球種の習得に取り組んだ。「カットボールが欲しいなと実感しました。大きなスライダーは、コースを際どく狙うと見送られていた。真っすぐと思って振りに来たところをカットで詰まらせたいと思って。右打者のインコースに小さく食い込むボールが欲しかったので練習しました」。打者の内角を攻めて、打球を詰まらせるのが狙い。「チームでも、いろんな人に話を聞いた。そこからユーチューブの動画を参考にしたりしたんですけど、自分は手のひらが小さいので…。試行錯誤しながら。投げやすい握りを見つけました」。今季は新たな武器を持ってマウンドに向かう。

左キラー襲名を狙う「左の左沢」は、実は右利き。「箸は右、ペンも右ですね。打つ、投げる、蹴るだけ左。卓球とかバドミントンは右です。右利きなので…」。漫画「MAJOR(メジャー)」の主人公、茂野吾郎ばりの野球人生を持つ。「遊びの野球は右で投げていました。ただ、5歳で右肘を脱臼して…。痛くて投げられないから左で投げていたら、いつの間にか左投げになっていた。小学1年生で野球を始めたときは左投げ用のグラブを買ってもらいました」。けがの功名なのか…? 幼少期の痛い思い出が「左の左沢」を生み出していた。

現在は開幕日が延期されているため、大阪・舞洲の球団施設で自主練習に励む。施設を使えるのは午後からのため、午前の時間も有意義に過ごしている。「午前中に体幹トレーニングをしていますね。野球だけじゃなくて、違うスポーツ選手のストレッチをユーチューブで見たりですね。(芸人の)なかやまきんに君の動画も面白くて参考になります」とおちゃめに笑う。「今しかできないので、刺激になりますね…」と話すのは料理だ。「大変な世の中ですが、おうち時間も充実させていて悪くないかなとは思います。煮込みハンバーグを作ったり、肉じゃがを作ったり。楽しんで学んでいます」。

新球種のカットボール習得も、自前…。足りないものを自分で発見して、補う姿勢が目立つ。「プロ2年目。昨年の経験も生かして、結果を求めていきたい」。「左の左沢、ここにあり」をマウンドで証明する。【オリックス担当=真柴健】