きれいな成長曲線を描く。オリックス紅林弘太郎内野手(19)が、奮闘を止めない。

「まだまだ全然ですね…。たまたまです」

苦笑いで謙虚に話すが、ボロボロになった両手は隠しきれない。18日西武戦(京セラドーム大阪)では5回に左翼席へ6号2ランをたたき込んだ。「その前の打席、全然タイミングが合ってなくて空振り(三振)したんで、なんとかバットに当てようと…」。修正し、見事な放物線で先発山本を援護した。

抜群の「声かけ」をくれる中嶋監督の期待に、結果で応える。16日の楽天戦(楽天生命パーク)の試合前。紅林はスタメン表を見て、目を丸くした。プロで初めて打順が3番となり「結構、ビックリしました…」。ただ、指揮官から「3番目だからな。気負うなよ。3番じゃないぞ。“3番目”だからな」と念を押され「リラックスできた。3番というよりかは、やることは変わらず。バントもしますし、僕の仕事をするだけ」と心に決めた。

シーズン終盤での、3番打者不在…。主砲の吉田正が負傷離脱中で、普段から面倒を見てもらっている19歳の和製大砲候補が“代役”を務めた。紅林は「今の僕の実力では『打つ3番』というより、なんとか(4番の)ラオウ(杉本)さんに回すという仕事。監督もそういう期待をされていると思う」。吉田正の存在は「神ですね。見習うところしかない。チャンスでもめっちゃ打ちますし、すごい」と尊敬のまなざしを送る。

がむしゃらに生きる。「1打席1打席を大事にしようと(水本)ヘッドコーチに…」と、執念を見せた打席がある。15日楽天戦の9回2死一塁。7点ビハインドで中飛に倒れ、最終打者となったが、森原を相手にファウルなどで17球粘った。「その前の試合(14日)で3点差の9回2死一塁で回ってきて三振した。その次のバッターは代打のモヤが構えていた。『塁に出て、モヤにまわせば何か起きるかもしれない』と。塁には出れなかったんですけど、その失敗を生かした」と、打席内容に胸を張る。

中嶋監督は「19歳? いくつかは関係ない。ここまで(試合に)出ています」と信頼を寄せ「成長も見えるし、まだまだ足りないものもある。シーズン終盤になって、落ち着いて打席に立てているのはいいこと」と評価する。一方で「たまたま3番目に打っているだけで、全然3番(打者)じゃない」と愛のムチを入れるのを忘れない。

穏やかな性格の紅林は「監督に結果で恩返ししたい」とシーズン序盤から繰り返して口にする。本拠地で使用する登場曲は、これまでは自身の名前にちなんで「X JAPAN」の「紅」を使用してきたが「最近めっちゃ勝手に変えられるんですよ…。宗さんに…」と、創聖のアクエリオンやLOVE&JOY(木村由姫)などポップな曲に変更されている。本人は全く気にしておらず「1打席目に『なんか変わってるな?』って。今日(18日)もちょっとよくわかんない曲だったんで…」と気にしていない。

自然体でドッシリ構える。大物誕生の予感がする。【オリックス担当 真柴健】