オリックスが、日本シリーズ進出を決めた。リーグ連覇の96年以来、25年ぶりに日本一への挑戦権をつかんだ。

25年前の優勝風景ってどんな感じだったかな? と思い、当時の記事を検索してみた。96年9月24日付の本紙記事は「う・わ・あああ……!」のイチローの絶叫から始まる。ニールに酒だるに放り込まれたスーパースターは「オレ、飲めないのに…」とぶつぶついいながら、たるから脱け出せずにもがいていた。今の監督、中嶋捕手は頭にタオルを巻いて臨戦態勢を整え、高橋智や小川らと酒だるをひっくり返していた。

気楽な記事だな~と思いながら署名を見たら、なんと自分の名前。うわ~、忘れてたな~。25年前だものなあ~と物忘れを棚に上げ、長期低迷のせいにした。

コロナ禍の今年はそんな光景は見られなかったが、低迷期ならとっくに冬眠中の京セラドーム大阪には祝祭感が漂っていた。リーグ優勝時に届いた花の香りが残るバックネット裏の通路のあちこちで、ファイナル開幕の前日取材が始まる。会見場では開幕投手の山本に続いて、中嶋監督とT-岡田が会見。その間に右手首骨折から復帰した吉田正が、ロッカー前で取材対応。取材を仕切る町広報が、あわただしく行き来しながら「これが本来の秋ですよね」とつぶやいた。CSとは無縁の低迷期にはなかった光景だった。

ファイナル突破は、心に残る光景の連続。宗の2ランで逆転し、故障明けのバルガスが球団最速の159キロの剛球を披露した。7回に追いつかれ、8回に1点を勝ち越されても、9回は増井が無失点で反撃態勢を整えた。今季は不調に苦しんだが、9回を熟知するかつての守護神に中嶋監督は働き場所を用意した。

そして9回裏。チームの看板選手として奮闘してきたT-岡田と安達の連打で無死一、二塁とし、最後は小田がサヨナラドローを導くバスター。第1戦は山本、T-岡田、第2戦は田嶋、杉本と主力がヒーローになったが、最終戦は足と守備で貢献してきた小田の打撃にスポットライトが当たった。小田の準備の積み重ねを知る監督が必勝のサインを出し、それに応えた。陰の努力を見てきた田口外野守備走塁コーチは「そういう選手がヒーローになってくれた。本当にうれしいです」と声を震わせた。

オリックスのシーズンは、まだまだ続く。四半世紀も待たせた分、ワクワクとドキドキでファンの期待に応えるシリーズになることを願う。【堀まどか】

巨人を破って日本一となり、祝勝会で酒樽に投げ込まれ恍惚の表情のイチロー=1996年10月24日
巨人を破って日本一となり、祝勝会で酒樽に投げ込まれ恍惚の表情のイチロー=1996年10月24日