令和になって初めての夏。気になる野球人の今を伝えます。

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スタートはいつも西武第2球場だ。

三塁側ベンチで、松井稼頭央2軍監督(43)は選手たちの一挙手一投足を見つめている。「自分がプロ野球選手としてスタートした第2球場から、またスタートできることに感謝の気持ちでいっぱい。若い選手と一緒に汗をかいて、選手の成長が見られるのは、本当に楽しいですよ」。現役から退き「77」のユニホームを着て、指導者として歩み始めた。

嶋コーチと話す西武松井2軍監督(左)(撮影・滝沢徹郎)
嶋コーチと話す西武松井2軍監督(左)(撮影・滝沢徹郎)

25年間に及ぶプロ野球人生。平成という時代をトップで駆け抜けた。2軍監督就任を機に、記憶を巡らせた。野手としてドラフト指名された1年目。「毎日特守。投手から野手(転向)だったので、もうやるしかない。守備、走塁、打撃。すべてやらないといけなかった。考える時間はない。やることが山盛り。自然と練習量は多かった」。無心で鍛錬した1年を終えるとまさかの2年目があった。

5連覇中の黄金期。19歳にして、東尾監督に抜てきされた。今、監督という立場になったからこそ真意を聞いた。「東尾さんと話す機会があるので『なんで僕を使ってくれたんですか』って。どう感じていたのかと思って。まあ…ほぼ我慢の連続だったと思います」。捕球までは見るが、送球の瞬間に目を背けていた。辛抱強く起用されたから今がある。

自分がそうだったように、若手選手が秘める無限大の可能性を信じている。

松井2軍監督 まず見るようにしている。見ないと分からない。見て、考えて、解釈して伝えることもある。選手に聞いて照らし合わせて、クリアしていく。クリアしても打席では相手がいるから、すぐに結果は出ない。理想はすぐに出ることだけど、試合は動いて状況は常に変わる。現役のときも「これだ」と思っても、バッティングなんてすぐに離れていく。つかんだと思ったら離れていくんです。感覚のことも、くだいて整理して言葉として伝える。けど僕も、まだまだできていない。難しいよね。勉強していかないと。

成長に近道はない。けど道筋を作ることはできる。

松井2軍監督 勝ちゲームの緊張感は選手を成長させる。1番は7、8、9回。ここでリードしていたら絶対勝ちたい。守っている選手も、勝ちにきているという緊張感の中、考えることが出てくる。漠然と試合していては、何もない。そういう姿勢を見せることで選手が感じることがある。それでも負けることはあるが、その積み重ね。後半、どう勝ちにいくか。どう1点を取りにいくか。試合が一番の財産になる。

ある選手から「今日の試合、しびれましたね」と言われたことがある。1つのミスが命取り。犠打、エンドラン…見逃すことができないサイン。この緊張感を味わわせたかった。「しびれたところで成功させる。失敗したら練習する。その繰り返し。1年は長いかなと思ったけど、もう7月。早いな」と目尻を下げた。

悪戦苦闘する日々の中、平成から令和へ時代は移り変わった。

松井2軍監督 平成はたくさんのスターがいた。令和でも若い選手たちが1軍で活躍することを目指し、スーパースターを目指し、それがライオンズから出てくることが楽しみ。出てくると思ってサポートしていく。僕のことはどうでもいい。時代を走ってくれる選手が出てくること。若い選手には、本当に可能性がある。それを信じて、どんどん伸ばしていってもらいたい。引き出せるように、やっていけたら。

令和元年、監督元年。新たな時代を駆けていく。【栗田成芳】