最下位に苦しむヤクルトです。開幕直後は2位で巨人に食らいつく戦いも見せました。それが、少しずつチーム力が落ち、現状は最下位に落ちています。下位に沈むチームを評論する際、どう客観的事実を示しつつ説明できるか。実は解説する側も神経を使います。負のデータだけを並べ「だから勝てない」と結論づけても、ヤクルトファンはこの先の展望が開けないからです。

6月25日、阪神戦で9回にサヨナラ3点本塁打を放つ西浦。投手藤川
6月25日、阪神戦で9回にサヨナラ3点本塁打を放つ西浦。投手藤川

開幕前から投手力が不安視されていました。そして、攻撃面ではバレンティンが抜け、山田哲、村上を軸とする戦いになりました。開幕直後は、阪神戦で西浦が藤川から代打サヨナラ3ランを放つなど劇的な勝利も収め、まだ投打はかみ合ってはいました。ただ、その一方で、先発陣は長いイニングが投げられず、救援陣によってしのいでいた実情でした。

救援陣は、何とか2位で踏ん張っていた20試合目までの防御率は3・68。その後は疲れが見え始め、21試合目から今月15日までの防御率は4・76と極端に悪化しています。救援陣が踏ん張れず、唯一の勝ちパターンが機能しなくなり、上がり目が見えない現状です。

選手層に課題があるヤクルトで、この救援陣の疲弊は深刻でした。先発ローテーション投手で貯金ができているのは小川(8勝3敗)だけ。先手が取れない試合が多くなり、打力でひっくり返せないために、リードされていても救援陣を使わざるを得ない。悪循環だったと言えます。

将来に目を向けても、厳しい展開が予想されます。山田哲、小川がFA権を取得して動向が注目されます。行使して移籍するかどうかは本人次第ですし、当然引き留める球団としても、本人たちの判断を待つしかないでしょう。

ただ、移籍することも考慮しておくべきで、山田哲が仮にFA移籍となれば、昨年のバレンティンに続き2年連続で打線の中核が抜けます。球界を代表する山田哲の代わりを日本人で埋めるのは至難の業でしょう。また、小川が移籍したとすれば今年の勝ち頭を失い、投手力の大幅な戦力ダウンは否めません。

何よりも投手力の強化を最優先する状況にあります。イノーア、スアレス、クック、マクガフの外国人選手はいずれも期待通りの活躍はできていません。日本人投手の戦力も乏しく、いち早く投手整備に着手しなければ、今後数年先のチームにも大きな影響を与える可能性があります。

ファンはつらいでしょうが、数年がかりで奥川ら新戦力を育てる長期的ビジョンを選択するのか、外国人選手、トレード、ドラフトでの即戦力補強で短期的に立て直すのか。もしくは、同時進行にトライするのか。球団の編成はそういう視点での判断が求められていると思います。(つづく)

里崎智也氏
里崎智也氏

◆YouTuber里崎氏の「里崎チャンネル」(登録数約36万人=12日現在)は球界の最新の話題を先取りしている。早くも「FA選手の動向」として注目選手のFAについて大胆予想を展開している。