古田敦也は今、グラウンドの外から野球の魅力を伝えている。選手会長として体を張って、12球団を守ってから14年。球界は少しずつ構造改革が進んだ。

巨人戦のテレビ放映権頼みの経営から、おらがチームの応援に足を運んでもらって成り立つビジネスへと変わってきた。「地上波の放送はなくなったかもしれないけど、でも世界中見ても、試合をテレビで見たい人は課金して見る。どこの国でもそうだから。ある意味、普通になったんですよね」。ユニホームを着ていない立場から、客観的に見ている。

新たな胎動が聞こえる。ZOZOTOWNなど球界参入を希望する企業や、16球団に増やすべきとする政治家、団体の意見がある。「大歓迎ですね」と穏やかに言った。

「NPBは12球団だけど、BCリーグとか独立リーグもプロですから。規模は小さいとはいえ、全国で十何チームあるでしょ。だからポテンシャルとしては全然、あるわけですよ。ご丁寧に日本って、どこに行っても球場があるんです」

古田が奮闘した球界再編問題の末に誕生した、楽天の本拠地・仙台。天然芝が敷かれ、観覧車が回る憩いの場として市民を集めている。

考えているのは、町おこしだ。「今は東京の人口だけどんどん増えている。全体は減っているのに、一極集中。そのうち破綻するじゃないですか。逆に地方の中核都市は、魅力を持っておかないと流出しちゃう。僕はスポーツというのは、人が寄ってきて出て行かなくなる魅力があると思うんです」。大谷翔平が日本ハムからエンゼルスへ移籍した時、札幌の人たちは「ここで育ってくれてありがとう。頑張ってこいよ」と送り出した。「卒業生みたいになるのは町を愛してるから。いい形になってきたんじゃないかと思います」。

今後の野球界への提言がある。

古田 野球はね、国技じゃないけど国技と言ってもいい。もうすぐ90年。高校野球は100年たってますが、脈々と伝統があって、みなさんの心に刻まれて、愛されている理由はある。もっと繁栄してもらいたい。僕も微力ながら、そんなことを考えて活動させてもらっている。子供が減ってくる。地方というか、日本が全体的に持っている不安、課題にも利用できるなら、利用して欲しい。具体的に言うとエクスパンションしてほしいと思っています。四国、新潟あたり、北陸。移動も簡単になっている時代ですし。そういうのに使っていただければ。

在野にいながら、野球界と日本の未来への熱い思いは変わらない。希代の野球人に再びユニホームを着てほしいと願うファンの声も絶えない。(敬称略=この項おわり)

【竹内智信】