2015年(平27)1月、プロ野球界初の女性オーナーが誕生した。南場は就任会見で女性ならではの視点を示す。「(試合観戦した)1日目に言ったことは『トイレをきれいにしてください』と。女性はそういったことに敏感」。そういった女性目線のイベントは、前年から球団が展開。女性来場者に限定デザインのユニホームをプレゼントする「YOKOHAMA☆GIRLS FESTIVAL」が始まったのも、15年からだった。

女性オーナーの就任によって、球団が掲げる「継承と革新」がさらに根付き、枝葉へと浸透していく。その波及効果は、球団の枠を超える。オーナー会議はパに比べセの出席率が高い。その理由の1つに、南場の存在を挙げる人間もいる。しなやかな立ち居振る舞いと、オープンマインドな性格。場を和ませ、明るくする。一国一城の主(あるじ)たちが一堂に会すオーナー会議でも、一目置かれる存在となる。

南場 座敷わらしのような感じです(笑い)。人生の先輩方なので勉強することがいっぱいです。普段の会議では1人でアグレッシブに話していますが、なるべく控えめにしています。早めに皆様集まられて、時間をフルに使いお話を聞く。すると皆様から並々ならぬ野球愛を感じるんです。

就任間もないある会議で、話題は本拠地マウンドに及んだ。傾斜の角度、土…。「横浜スタジアムは?」と聞かれ「知りません! すぐに調べます!」と慌ててスマホを握った。

南場 「いいよ、いいよ」って皆様、優しくて。私は本当にルーキーなんだと思いました。球団については、経営としてまだまだできていないことがありました。球界としても、野球振興や1球団の利害を超えて、みんなそろってやる。やっぱり、球団を買収したとき最初に言われた言葉を思い出して、全球団でプロ野球という舞台を盛り上げるという思いが湧いてくるんです。

球団買収の際、あるオーナーから言われた言葉があった。名前こそ伏せたが、読売新聞社渡辺恒雄主筆と同様に、相談に伺ったオーナーから「プロ野球は1つのステージ。ベイスターズに舞台があるというわけではなく、プロ野球という舞台を盛り上げていく覚悟を持ってほしい」。強烈な助言と受け止めた。

南場 会社のイメージがアグレッシブで、自社のことしか考えない印象を持たれたと思う。私もこの心構えが大事だと、今でもその言葉を思い出す。1球団だけいいのではなく、プロ野球、ファンも含めた盛り上がりをみんなで作りあげていく。そういう気持ちで取り組みたいと、強く思います。(敬称略=つづく)【栗田成芳】

15年1月、DeNA池田純球団社長(左)と並び、就任会見に臨む南場智子新オーナー
15年1月、DeNA池田純球団社長(左)と並び、就任会見に臨む南場智子新オーナー