全国高校野球選手権大会が100回大会を迎える今年夏までの長期連載「野球の国から 高校野球編」。名物監督の信念やそれを形づくる原点に迫る「監督シリーズ」第10弾は、大垣日大(岐阜)を率いる阪口慶三さん(73)です。


 22歳で母校・東邦(愛知)の監督になり、この春で大垣日大も含め、2校で通算52年目を迎える、記録的に長い監督生活。半世紀超の物語を、全5回でお送りします。


 2月17日から21日の日刊スポーツ紙面でお楽しみください。


 ニッカン・コムでは、連載を担当した記者の「取材後記」を掲載します。



 73歳になった阪口慶三監督の取材で、自慢の教え子の皆さんにお世話になった。

 元中日投手の水谷啓昭さんは、今も球団の少年野球担当として地元で普及活動にフル回転している。

 同じく、元中日投手の山田喜久夫さんは、ナゴヤドーム近くで人気のわらび餅店「喜来もち」を営みながら、少年野球チーム「侍」で小学生に野球の楽しさを伝え続ける。

 NHKの甲子園解説者としても活躍する大矢正成さんは、JR東海に勤務。解説とともに、かつて甲子園でバッテリーを組んだバンビ坂本こと、坂本佳一氏のNPO法人「フィールドオブドリームズ」の活動もサポートする。

 この他にも、お世話になった教え子の皆さんのほとんどが、今も野球とともに生きている。

 阪口さんには強い信念がある。教え子たちの顔を頭に浮かべながら、ゆっくりとこう話してくださった。

 「俺のオヤジは阪口先生だと誇りを持って言えるような、最後までそういう生きざまでありたい」

 高校野球に、人生のすべてを捧げたと言ってもいい。たばこは吸わず、お酒も、就任当初はまったくダメ。宴席でもホットミルクを飲んでいた。全国制覇し、パーティーなどに呼ばれる機会が増え、少しだけたしなむようになったが、今も酔っぱらうようなことはない。

 取材中、珍しく、お酒の話になった。

 最近は、ハイボール1杯がお決まりだという。

 「ハイボールを最近教えてもらった。ハイボールって、高めの球という意味?? ピッタリだ」。結局、勝手に野球の飲み物になってしまった。

 大手サントリーさんの公式サイトによると、由来は野球とはまったく違うようだが、いかにも阪口さんらしい。東京に戻ってからも、何度も思い出し笑いをしてしまった。

 何もかも、野球。高校野球。それこそが、阪口慶三。取材を通じ、あらためて実感させてもらった。

【八反誠】