2年夏は、広瀬にとって高校時代のハイライトだったかもしれない。内外野と投手を兼任。広島大会1回戦で、広瀬を擁する大竹は府中と対戦した。広瀬が投げ、勝った。投げ合った相手は根来広光。後に国鉄(現ヤクルト)の捕手として、400勝投手の金田とバッテリーを組んだことで知られる。3-1で府中を下した試合は、実は大竹の夏の県大会初勝利。「歴史的1勝」でもあったのだ。

広瀬 投げ勝ったのは覚えてるけど、内容は覚えとらん。高校在学中に勝ったのは、このときだけやったかなあ。

2回戦は先輩の森内勝巳が投げて、尾道商に(2-8で)敗れた。広瀬と同学年でともにプレーし、現在は大竹高野球部OB会長である清永恵三は振り返った。

清永 道具がなくて、ボールはずっと使い回していた。縫い目がほころぶたびに何度も縫い合わせているからフワフワで、ふだんはそれで練習していたんです。それが試合になったら硬~い球になるんだから、そりゃ打てないし、勝てませんよ。

この年の4月16日に、プロ野球の広島-巨人戦が、高校のそばにあった警察学校のグラウンドで行われている。公式戦だったが、広瀬の記憶では、グラウンドに網を張ってプレーするという簡素なものだったという。

広瀬 ボール拾いのアルバイトの話があったので、みんなで行った。試合前の練習で川上(哲治)さんや千葉(茂)さんらのプレーを見た。千葉さんがノールックでファーストに送球するところとか、すごいなと思ったよ。試合は、ボール拾いに忙しくて見られなかったけどな。

それがきっかけになったのか、ひょんなことから広瀬は広島の入団テストを受けることになる。先輩の森内が受ける際、1人じゃイヤだから一緒に行ってくれと頼まれたからだった。2人とも合格し、森内は高校卒業後、広島に入団したが、広瀬はその場で断った。

広瀬 先輩に付いていっただけやしな。行く気は全然なかった。テスト受けに来て受かったのに断るなんて、今考えたら失礼な話や(笑い)。そのおかげで、自分でもプロに行けるのかとは思ったけどな。

高校3年になると、投手で4番を務めた。夏の広島大会、初戦の相手は呉三津田。先発した広瀬は初回に四球を連発、2ランスクイズなどで3点を奪われたという。2回以降は抑えたが、味方打線が2点しか取れず2-3で敗れた。7月22日のことだった。

広瀬 2ランスクイズなんて、初めて見た戦法やったし、驚いたよ。

あっけなく最後の夏が終わった。試合後、広瀬は近くの食堂で仲間数人と食事をし、ビールまで飲んだという。

広瀬 ずいぶん昔の話やから。(高校野球も)終わったんだから、ええやろって。飲んだといってもコップ1杯くらいやで。

同学年の小田源三は言う。

小田 我々は後でその話を聞いた。僕らは行ってませんよ、マジメやったから(笑い)。

豪快でおおらかな広瀬の高校野球は、これで幕を閉じた。が、すぐにプロというステージでの幕が上がることになる。(敬称略=つづく)【高垣誠】

(2017年11月19日付本紙掲載 年齢、肩書きなどは掲載時)