ライナーで右中間を真っ二つに割った。2戦目の初打席で放った二塁打。170センチ、74キロ。チームで最も小柄な選手というが、なかなかのパワーを持ち合わせている。中日のルーキー友永翔太外野手(24=右投げ、左打ち)。私が注目したのはその時の二塁ベース上の動きだ。当たり前のプレーで片付けてしまえばそれまでだが、友永をよく見ていると、三塁コーチャーのサインを受け取ったあと、投手が打者に対して1球投げるごとに左翼手、中堅手、右翼手の守備位置を必ず確認してリードを取っている。次の行動を起こすための準備を怠っていない。この世界では欠かせないプレーであり、一人前とされる「当たり前のことが、当たり前にできる選手」に近づきつつあると見ていいだろう。

 鳴尾浜球場での阪神3連戦で私の目に留まったプレーだ。意識している様子がないところがいい。東海大相模-国際武道大-日本通運を経て今季ドラフト3位で入団した球歴。基本プレーが自然にできるのは、好プレーヤーの条件。今後が大いに楽しみだ。チームも大きな期待を寄せている証しが背番号だ。中日で過去、新人で背番号1を背負ったのは福留(阪神)以来16年ぶりだと聞いた。

 プロの世界。早いものだ。もう半年が経過する。自分で決断して飛び込んだ道とはいえ、弱肉強食、強い者だけが生き残れる世界。厳しい条件の中懸命に努力を積み重ね、一歩一歩着実に進化している。本人が「だいぶ、間が取れるようになってきました」という打撃の調子は「良くなっている」証しを見せてくれた。3連戦の結果は初めから順に3打数1安打1四球。3打数1安打1四球。3打数1安打1四球。4打数2安打1打点。数字を見ても分かるが、12打数で6出塁は2番打者としての役割を十分に果たしている。そまた、2、3戦目では盗塁も成功させ、守っては頭上を襲う大きな飛球を好捕。打って、守って、走って。首脳陣に1軍昇格のアピールをしたかのように思えたが、友永タイプとしては攻、走、守いずれもきっちりできてこそ持ち味発揮なのだ。第2戦後、英智外野守備走塁コーチから、みっちりおきゅうを据えられていた。

 やってはいけないミスを犯していた。5回の守り。走者一塁からの中前打。大事に捕球しようとしたプレーが少々緩慢な動きに見え、ちょっとファンブルした。そのスキに走者は3塁へ。友永が球を拾いあげ慌てて三塁へ送球したものの、今度は打者走者の二塁進塁も許してしまった。この回はなんとか事なきを得たが、8回の攻撃。四球で出塁。盗塁を決めたまではよかったが、1死一、二塁から代打藤沢の二塁ライナーで判断を誤って併殺を食らった。一瞬にしてチャンスを潰した。結局、勝っていたこのゲームは土壇場で阪神一二三に満塁弾を浴びるなど逆転負けした。英智コーチの「喝」は15分、いや20分以上続いた。

 一塁側ベンチ前(鳴尾浜は三塁側がホームチーム)帽子を取って何度も何度もうなずく友永。内容までは我々に聞こえてこなかったが、同コーチに話を聞いてみた。「ああいミスは、ゲームの流れを変えてしまうんです。だから、ひとつひとつのプレーをもっと、しっかりやるように伝えました。それと“今日のゲームはお前のあのプレーが流れを変えた。あのミスが敗因の試合だ”とも伝えました」。新人にはかなり厳しい言葉だが、これは期待するがゆえの“愛のムチ”だろう。翌日2安打1打点1盗塁の活躍。コーチの厳しい言葉が発奮材料となっていたら実に頼もしい選手だ。

 その友永「もう半年になりますねえ。この世界に慣れてきたのは確かですが、プレーに関しては初めのころより、今の方が考えさせられることが多いですね。それだけ厳しいということです。テーマですか-。僕らのタイプは打つことも、走ることも、守ることもすべてレベルアップしないといけません。まだ、まだこれからです」プロとアマの差は歴然としているのがわかった。強い者だけが生き残れる世界であるのもわかった。これがプロである。大いに発奮することだ。1軍昇格、あと一息だ。