暑い。半端じゃない。鳴尾浜球場は海岸の埋め立て地に築かれたグラウンドで、浜風はそこそこ通り抜けてくれるが、この時期、それでも我慢の限度を超える。私も現役時代に昼間の練習は体験した。当時を思い出しながら選手の動きを見ていて、ふと頭をよぎったのが“熱中症”の対策。いまや、試合中でも場内放送でファンに注意を呼びかけているし、選手達も水分補給にぬかりはないが、そういう意味で我々の頃の真夏の練習を振り返ると、背筋をゾーッと冷水が流れ落ちた。

 「疲れるから水は飲むな-。額や、顔に吹き出してくる塩を舐めとけば大丈夫や」。1960年前後である。よくこう一喝されたものだ。確かに汗がかれると塩になる。塩をなめると唾液が出て、多少なりと口の中が潤う。今どきでは考えられない過酷な方法だが、選手が倒れたのを見たことはない。ここでハッと我に返った。ボーッと当時を思い出している場合ではない。取材だ-。

 気になることがあった。阪神ネルソン・ペレス外野手(27)の件だ。今年の6月に北陸のBCリーグ石川から獲得して1カ月。目下、ウエスタン・リーグで素晴らしい結果を残している。内容は14試合に出場。51打数17安打9打点、打率3割3分3厘。ホームランは4本。成績を見る以上、力はある。何ら悲観することはない。むしろこの先、楽しみな選手だが、私の頭の中には広報担当時代に植え付けられた対マスコミの意識が渦巻いている。どうしても余分なことを考えてしまう。案の定、今回も心配の種が頭にこびりついて離れない。それも調子のいいがゆえの悩みである。

 外国人は誰もが一番になりたがる。人を押し退けてでも頂点に立ちたがる。ここに問題がある。ペレスの現状にいらだちはないだろうか。気になって同選手の練習態度を追いかけてみたが、真面目に取り組んでいる。守りの練習にしても外野ノックが終わると、自分から進んで内野(一塁手)の守備に着く。紅白戦で途中からファーストを守ると「いい時間を過ごせた。良かったな。これから少しずつでも勉強して、もっと心地よく守れるようにしたい」。マートン、ゴメスの後釜であり、不慣れな一塁手へも積極的に挑戦している。どう見ても不満分子があるようにはみえない。そして、来日初の4安打した時、初ホーマーを放った時も「こういうチャンスを与えてくれたチームに感謝している。自分のできることをしっかりやってチームのために頑張りたい」と優等生の返事。

 取り越し苦労に終わることを願っているが、こういうときは監督に話を聞くしかない。古屋監督を直撃してみた「問題になるようなことは、現状ではありません。真面目な選手ですね。ただ、本間さんの言われるようなことはありがちですし、そうならないようにするための一番大事なことは、コミュニケーションですし、もし、不満を持ち出した時でも、それを解消するのは対話です。常に頭の中に入れて対応していきます」だった。1軍の両外国人はペレスに刺激されて調子は上向いてきた。外国人枠に余裕はない。果たしてどこまで我慢できるか。

 私が広報として体験した中で、一番厄介なのは新聞紙面上で首脳陣vs選手間で、相手を批判する談話のキャッチボール状態になったときだが、今回は大丈夫と見た。独立リーグと阪神タイガースでの報酬ないはクレームを付けにくいほどの差があるはず。チームの士気に影響するようなことはない。それより掛布DCが「レベルにスイングできるし、打席でバタバタしないのがいい。この感じで打って行ければ長打も自然に出るよ」というバッティングを1軍の試合で見てみたい。読者の皆さん、すみませんでした。つい、元広報の血が騒いで、いらぬお節介を焼いてしまいました。