今季の阪神(1軍)はBクラスに甘んじた。予想通りの結果だった。開幕当初はスローガンの超変革にうまくはまって、まずまずのスタートを切った。高山が頑張った。横田が、江越が台頭した。ピッチャーも岩貞がローテーション入りした。青柳が、守屋がデビューした。新しい芽が吹き出してきた。昨年までファームで活躍していた若手の成長は、将来を見据えた場合楽しみの持てるチームへと変貌するかに思えた。ひ弱なチームから勝負強い頼もしいチームへ、ちょっぴり期待はしたが、この世界、甘くはなかった。若手の力不足が如実に。打開策は-。鳴尾浜で必死に歯を食いしばって頑張る若い力の出現だ。

 ただ、1軍に昇格したばかりの若手は、推薦された時点での調子は良くても、実際にはまだ、海のものとも山のものともわからない。長期にわたってコンスタントに力を出せる選手ははわずかしかいない。大半が力不足、経験不足。短期であれば勢いだけでその場を乗り越えられることはできても、すぐボロが出る。1990年台の阪神がそうだった。当時の記憶はいまだ鮮明に残っている。俗に言われる暗黒時代。92年(2位)を除いてあとはすべてがBクラス。よく面白半分に言われたものだ。「6位、6位、5位、6位、6位」などと-。あの頃、試合管理人代行として、広報部長としてチームを見守り、周囲の声をモロに受け止めて屈辱に耐えていた。

 当時によく似ている。だから、今季のチームを立て直すためのスローガンが、私には、手の打ちようがない戦力を踏まえて、どんな手でも打てる苦し紛れの超変革に聞こえた。軸のない打線。鳥谷の状況がすべてだった。90年代が頭に浮かんできた。不思議な現象を見た。実力の伴わない選手の調子である。連鎖反応だろうか。調子を崩した選手が一人出てくると、きまって次から次へと選手の状態が悪くなってくる。そして、いつの間にか全員が打てなくなっている。こうなったら勝てっこない。10連敗~12連敗とどん底にはまっていく。今年も同じように江越が打てなくなる。上本もバットが振れなくなってきた。横田は持ち味の一発が出ない。高山も一時は壁にぶち当たった。気がつくとBクラスに定着。よく似ている。ゆえに現状の成績が予測できたのだ。

 戦力が固定できなかったのは、実力のある選手が少ないからだ。今年のペナントレースもかなりの入れ替えがあった。野手が35人いる。うち、なんと30人が1軍登録されている。過去、この数字に近い入れ替えはあったものの、これだけ頻繁に行き来したのは珍しい。金本監督の選手各個の特長を把握しておきたい意向があってのことだろうが、選手が口を揃えて言ったのは「いい経験をした」だった。若手の成長は1軍の経験にまさるものはない過去には昇格したものの一度もひのき舞台に立つことなく、2軍にUターンするケースがあったが。今年に限っては全選手が試合に出場している。

 数多くの若手が1軍を体験した。来季のチーム編成にはプラス材料だ。チームの活性化は新戦力の台頭なくして実現はない。掛布監督の指導にかかるウエートは大きい。「確かにしんどい面はありますが、若手の成長は自分に直接伝わってきますからうれしいですね。やり甲斐がありますよ」責任ある立場となった。より一層指導に力がはいる。初のファーム監督「金本監督がいろいろ若手を起用してくれたけど、結局最後まで残ったのは北條と高山だけ。一番の反省は江越だね。1軍でレギュラーをつかむぐらいまでにしておきたかった。そういう悔しさもある1年だね」と反省していたが、公式戦は終了してものんびりしている時間はない。次回は土台作りの原点、ファームをどう手掛けていくか掘り下げてみる。