長足の進歩だ。攻、守、走。いずれも成長の度合いは桁外れ。特にバッティング。元々のパワーは持ち備えている。そこへ、技術が伴ってきた。ドミニカ共和国はカープアカデミーから来日して2年目を迎える広島サビエル・バティスタ内野手(25)右投げ、右打ち。4月20日中日戦から鳴尾浜、甲子園球場での阪神戦が終了するまでの10試合で6ホーマー。驚異的なペースで打ちまくっている。過去にもカープアカデミーから来日した助っ人はいるが、チームの核にまで成長していないはず。今回こそ本物の気配が…。

 すでに“8発”を放っている。先日の鳴尾浜球場、目の前で打った瞬間ホームランとわかる完璧な一発を見せてもらった。相手投手は1軍の経験も豊富な阪神・岩田。成長を証明する一発はレフトフェンス後方の防御ネット中腹に突き刺さった。素材は申し分ない。若手育成には定評のある広島だけにより一層期待したいところ。果たして日本式の練習法と合体するか。試合前の練習に注目した。アップから始まって、キャッチボール、バッティング、走塁、守備等を日本の若手と同じく精力的にメニューをごくあたり前にこなしていく。2年目、早くも結果を出している。現状を見る限り指導法」に疑問符はつかない。

 元プロ野球選手という性なのか、急成長する選手を目の当たりにすると、どうしても育成方法が気になる。。おまけに外国人。水本監督、さぞや悪戦苦闘していることだろう。興味を持って聞いてみた。答は意外にシンプルだったが、なぜか納得した。「彼らには、日本の選手と同じ行動をとらせています。外国人というと、どうしても特別扱いしがちですが、この2人に限っては日本人選手と同じ扱いをして鍛えてきました。それとゲームにどんどん起用して実戦の経験を積ませているのがいい結果につながっていますね。今日も試合が終わってから、こうしてバットスイングをしています」である。もちろん練習内容は熟慮したうえででした答だろう。確かにバティスタは、ドミニカから一緒に来日したメヒアとバットを振っていた。よく考えてみるとここは日本だ。日本でのプレーを望むなら当たり前のことをやっているだけにすぎないのだ。

 終始一貫した日本式練習の積み重ねが功を奏している。バティスタがカープアカデミーに所属していたとはいえ、ドミニカでの練習とにほんでの練習にはかなりの違いがあるはずだ。そこに急成長の一因があるとみた。本人に聞いた「かなりの違いがある。ドミニカの練習はそんなに長い時間をかけないが、日本の場合はすごく長い。だけど中身が濃いので、その中でのいろいろなアドバイスはすごく勉強になるので助かる。それとゲームが多いし、ゲームに出ていると実戦の経験が積める。いろいろなケースの体験は、多くのことが吸収できるのでありがたい。調子がいいのはよく練習ができているからだ」だった。7号ホーマーを見た。4打数、4安打。5打点も見た。問題は日本の野球をどこまで吸収できるかにあるとみた。 1軍が戦う甲子園球場で試合をした。ゴールデンウイークも手伝って初日が6374人。2日目は9242人。ウエスタンではめったにお目にかかれないファンを動員。球場のムードは盛り上がり、ファームではなかなか味わえない雰囲気の中でプレーすることができた。あとは状況判断など必要なことをどこまで貪欲に自分のものにするか。「今、バッティングコーチからのアドバイスは、ベルトラインの球をしっかり打てるようにすること」だ。与えられたテーマはホームラン量産の原点である。

 水本監督「ゼロからのスタートといいますか、昨年なんかとんでもない時に走ったりして、こっちの方がびっくりさせられたこともありましたが、よくここまで成長してくれました。まだ先のことまではわかりませんが、この調子が持続するようなら、あとは我々ではなく球団がどう判断するかです」という。急速に育ってきた。期待は膨らむばかりだが、現実にはまだ育成選手だ。ボール球によく手が出る。状況判断にも疑問符がつく。即1軍とまではいかないだろうが、5月8日現在の成績は打率がベスト10・2位の.326。ホームランはトップタイの8本。打点も2位の24。監督の手から離れる日は、そう遠くないところまで成長している。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)