内海哲也投手に続き長野久義外野手がFA人的補償で巨人から他球団に移籍した。かつてトレードで巨人から中日に移籍した経験のある野球評論家の西本聖氏に話を聞いた。

-内海(西武)に続き長野が人的補償で広島に移籍した。生え抜きのスター選手。優勝にも貢献した功労者がまた1人、巨人を去る

西本氏 優勝しなければいけない、チームを強くしなければいけないというのは分かるが、大事なのは何なのかな。とても残念というか、寂しい。FAで選手を取ったそのツケが来るというのは分かっている。しかし優勝へ向け「よし、行くぞ!」という時にチームの中心となるベテラン選手がたて続けにいなくなるのはどうなのか。選手は「自分だってどうなるか分からない」という不安な気持ちになる。これでチームが一つになれるのか。チームに良い空気は流れないと思う。

-西本さんも1989年に交換トレードで巨人から中日に移籍した

西本氏 当時の監督の藤田さんには「残してください。2桁勝ちます。ダメだったらトレードしてください」と言ったがトレードが決まった。トレードを断れば定岡(正二)のように引退するしかなかった。まだ野球をやりたいということでトレードを受け入れた。ただし「パ・リーグではなくセ・リーグで」とお願いした。パ・リーグだと巨人と戦えませんから。中日に行けたことで巨人と戦えた。出されてうれしい選手はいない。ただ勝負師であるならプライドを持っていないといけない。

-移籍1年目は20勝を挙げ最多勝に輝いた

西本氏 野球選手というのは言葉ではなく姿をファンに見せないといけない。姿というのはイコール「結果」なんです。男として、プロとして「まだやれるんだ」と。ファンの方には「何で巨人は西本を出したんだ」と思ってもらいたかった。特に巨人戦は燃えました。

-FAの人的補償という制度については

西本氏 ルールだから仕方ないが、まさか内海や長野がと、納得できないファンも多いのでは。これではトレードと同じ。もう少し制度そのものを考える必要があるのではないか。