元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。16回目は来年3月に行われる「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)選考レースは早くもサバイバル戦」です。

 交流戦を終えシーズン約半分に当たるセパ70試合前後を消化した。今回は来年3月に行われるWBCの話。「少し気が早いのでは」と突っ込まれそうだがそうでもない。選手会では13日にNPBと事務折衝を行い、WBCに本腰を入れるために開幕延期の議題も上がったほど。時間はありそうでないのだ。侍ジャパンの小久保裕紀監督(44)も昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」の選出メンバーとは少し青写真も変わってきているのではないだろうか。現段階で侍候補の選手、また同大会で不在だった中継ぎ陣はどうするのかを考えてみた。

【プレミア12準決勝韓国戦リプレー(2015年11月19日=東京ドーム)】

 先発した大谷が160キロの快速球を武器に韓国打線を翻弄(ほんろう)。7回1安打11奪三振と完璧に近い投球だった。打線も4回に平田の適時打、野選、坂本の犠飛でこの回3点を先制。投打に主導権を奪い決勝進出間違いなしと思われた。しかし9回、2番手則本が3者連続安打を許し3-1の2点差に詰め寄られる。流れは一気に韓国へ。無死満塁から3番手松井裕にスイッチしたが押し出し四球で3-2。ここで増井を送るが李大浩に2点適時打を許し3-4と逆転された。試合はそのままゲームセット。

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【中継ぎ候補】

 プレミア12で選出された投手編成を見ると中継ぎが不在で課題とされた。中継ぎも抑えも同じ「リリーフ」なのだが、大きく違うのは、中継ぎは四球も安打も許されないような無死満塁のピンチで登板したり、試合の流れ次第ではイニングまたぎを急に要求されたりと「特別職」であることだ。抑えは基本、9回無死走者なしの頭から、というケースがスタンダード。だから、誰でも中継ぎが務まるわけではない。

 12球団見渡して現段階で私がイチオシの中継ぎ候補は、田島(中日)宮西(日本ハム)益田、内(いずれもロッテ)あたりか。イニング途中からいける投手に重きを置いて「強心臓の猛者」を選んだ。

【外野手候補】

 プレミア12で足りないと思われたのは右の大砲。一塁を守った中田翔を左翼に回す手もあるが、同大会で選出された右の外野は平田だけだった。右で候補となりそうなのは長野(巨人)内川(ソフトバンク)鈴木誠也(広島)あたりか。左打者まで範囲を広げると角中(ロッテ)城所(ソフトバンク)も入ってくるか。私も2006年の第1回WBCメンバーに選出されたが、前年の成績(打率3割3厘、10本塁打、52打点、盗塁阻止率4割=パ1位)で選ばれた。城所も今季、このまま突っ走れば侍入りのチャンスがあると見ている。プレミア12で外野は、平田、筒香、秋山、中村晃。先に私が挙げた外野候補も含め誰が侍に生き残るか。

【内野手候補】

 プレミア12では今宮、松田(いずれもソフトバンク)川端、山田(いずれもヤクルト)坂本(巨人)中島、中田(いずれも日本ハム)中村(西武)だった。WBCでは菊池、田中(いずれも広島)倉本(DeNA)鈴木(ロッテ)田中賢(日本ハム)あたりがどこまで食い込んでいくか。菊池をどう使うか。メジャー顔負けのあのファンタスティックな守備力は捨てがたい。

【捕手】

 プレミア12では炭谷(西武)嶋(楽天)中村(ヤクルト)だったが、現在、負傷の嶋が万全かどうかぐらい。この3人が順当か。

【先発候補】

 セ・リーグでは野村(広島)今永(DeNA)岩貞(阪神)あたりがどう食い込むか。個人的には黒田さん(広島)がいい働きするんじゃないかと思う。日米で結果を残しているし、メジャーでの経験値が代表にもたらすメリットは大きい。年齢的にも精神的支柱というかまとめ役としても期待が高まる。パ・リーグでは、有原(日本ハム)石川、涌井(いずれもロッテ)千賀(ソフトバンク)がどこまで食い込むか。千賀の「鬼フォーク」は外国人選手も驚くと思うが。

【抑え】

 プレミア12では「日替わり守護神」みたいな感じだったので現在の状態では推測しがたい。シーズン後半戦で安定感増してきた投手を侍の守護神にするかも知れない。


 今後のシーズン残り70試合超で侍入りをアピールできるか期待される選手のサバイバル戦も注目だ。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)