元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。35回目は「WBCの投手球数制限より大事なこと」です。

    ◇   ◇   ◇

 今WBCでは投手の球数制限が適用される。

 【球数メモ】1次ラウンド65球、2次ラウンド80球、準決勝と決勝は95球まで。打席中に制限に達した場合、その打席完了まで投球できる。50球以上投げた場合は中4日、30球以上または2試合連続で投げた場合は中1日空ける。

 連日の報道を見ると、侍ジャパンの中には球数にこだわる投手も少なからずいるようだが、一番の目的は何かについて確認してみたい。

 答えはシンプル。「0点で次の投手につなぐこと」が最優先だ。球数が少なくて6イニング3失点がいいか、3イニング無失点がいいか。答えは当然、後者。投手は球数に神経を配って投球する必要はない。

 捕手がボール球を効果的に使って打者を打ち取ろうとするタイプの場合、WBCだからと、ストライク先行を強めると「よそ行き配球」になる。

 球数減を意識しすぎて失点した場合、国際大会でその失点は命取りになる。

 失点後にボール球から入る場合、2ストライク後に1ボールをはさむ場合、1ストライク後にボール1球入れる場合とボール球の使い方も多種多様。国内のペナントでは、長丁場だけに多少の失敗が許されることもあるがWBCは基本、一発勝負のトーナメント戦。無理やりストライクゾーンにいくと痛手を負いかねない。

 WBCでは、打者が普段対戦経験の少ないエース級の投手を攻略するケースは厳しく、味方投手が相手打線を抑えないことには勝てない。

 先日の台湾選抜2連戦がいい例だ。初戦では、球がまとまりすぎて痛打を浴びた。わざと打たせたかも知れないが、マスクをかぶった大野が内角を攻めきれずストレートはセンターから右へ、変化球は踏み込まれて打たれた印象が強い。2戦目は小林がボール球を気にせず、際どいコースへ内角球を有効に使った。初戦の反省を踏まえたリードに映った。台湾戦は壮行試合だから負ける余裕があったが、WBCでは1試合も負ける余裕はない。バッテリーは、試合中に相手の狙いを察知し、変化し続けていかねばならない。

 交代のタイミングはベンチが判断する。バッテリーの使命は球数がかかっても0点で抑えることに尽きる。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)